人数を数える女

 バス停で一人、バスを待っている時だった。歩道を歩いてバス停の方に向かってくる女がいたのだが、その女の様子がどうもおかしかった。その女は、妙な事を呟きながらこちら側に歩いてきた。


「一人、二人、三人、四人。」


 やばい人きた。そんなことを考えているうちにも女はどんどん近づいてくる。そして、この女がバス停に並びませんように、という願いも虚しく、女はバス停に差し掛かったところで歩みを止めて私の隣に並んだ。


「一人、二人、三人、四人。一人、二人、三人、四人。一人、二人、三人、四人。」


 私は女の方を見ないようにして、努めてスマートホンの画面に集中した。


「一人、二人、三人、四人。一人、二人、三人、四人。一人、二人、三人、四人。一人、二人、三人、四人。一人、二人、三人、四人。」


 寒さで手がかじかむ。


「一人、二人、三人、四人。一人、二人、三人、四人。一人、二人、三人、四人。一人、二人、三人、四人。一人、二人、三人、四人。一人、二人、三人、四人。一人、二人、三人、四人。一人、二人、三人、四人、」


 ちらっと、ほんの少し、目線だけを女の方によこした。


 女と目があった。


「五人。」

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