✤ 25 ✤ アランくんの正体


「おい、本当に聞く気か!?」


 次の日、学校にきた私と日下部くんは、校舎裏に向かっていた。


 あの後、私たちは、ミアちゃんに詳しく話を聞いた。


 ミアちゃんの話では、アランくんは、魔界からきた悪魔で、魔法が使えるらしい。


 そして、その魔法を使って、アランくんが、ミアちゃんとリュートくんを、未来から過去にタイムワープさせたんだって。


「本当に信じてるのか、あんな話」


「信じてないよ! でも、だから、確かめるんじゃない!」


 日下部くんの言葉に、私は、感情的に答えた。


 だって、信じたくないよ。

 あの優しいアランくんが、悪魔だなんて。


 でも、ミアちゃんが、嘘をついてるとも思えないし、しっかり確かめなきゃ──そう思って、私は今こうして、校舎裏までやってきた。


 物陰から、コソッと裏庭を見渡せば、そこには、一人で佇む、アランくんがいた。


 実は昼休みに、威世くんにお願いしておいたの。『アランくんに、放課後、裏庭に来てくださいって、伝えて』って。


 できるだけ人目のつかないところで聞きたかったから、この場所を選んだんだけど。

 でも、今思えば、この状況って……


「まるで、告白の呼び出しみたいだな」

「な!?」


 私が思ったことを日下部くんが呟けば、私の顔が真っ赤になった。


 でも、告白じゃないよ!


 私は今から、アランくんに『悪魔なんですか!?』って聞くんだから!


 いや、でも『悪魔ですか?』って聞くの、ちょっと酷くない?


 もし、悪魔じゃなかったら、どうするの?

 アランくんを、傷つけちゃうよね?


「俺が、聞こうか?」

「ダメ! 日下部くんは、絶対ダメ!」


 昨日、アランくんに、めちゃくちゃ敵対心、燃やしてたじゃん。日下部くんを行かせたら、どんなバトルが始まるか分からないよ!


 それに、私が呼び出したのに、日下部くんがきたら、アランくんびっくりしちゃうし!


「……ふぅ」


 私は、深呼吸をした。

 もちろん、気持ちを落ち着かせるため。


 そして、ゆっくりと歩き出すと、私は、アランくんに呼びかけた。


「アランくん!」

「恋ヶ崎さん……どうしたの? こんな所に、呼び出して」


 アランくんが、私に向かって、優しく微笑んだ。


 銀色の髪が、サラサラと風になびいてる。

 今日も、アランくんは、綺麗だなぁ──て、見とれてる場合じゃないよ!


「あ、あの……アランくんに、聞きたいことがあって」


「聞きたいこと?」


「うん。アランくんは、使なの?」


「え?」


 ほら!

 変なこと聞くから、アランくん驚いてるよ!


 でも、悪魔って聞くよりは、魔法使いの方がマシだよね!


「あ、あのね。その……アランくんは、魔法が使えるって聞いたの。時空を行ったり来たり、出来るとかって」


「…………」


 すると、さすがのアランくんも黙り込んだ。

 少しだけ、顔つきも変わった気がする。


 どうしよう!

 これ絶対、変な子だって思われたよ!

 アランくん、困ってるし!


「そっか。恋ヶ崎さんは、はじめて会った時、僕のことを、使って言ってたよね?」


「え? あ、うん! あれは、本当にそうおもったの。だって、アランくん、凄く綺麗だったし、人間とは思えなくて!」


「そう。僕が、って気づいてるんだ」


「へ??」


 いや、今、なんていいました?

 人間じゃないと言いました?


 え? 待って、本当に?

 嘘だよね!?


ザァァァァ!

「──きゃッ!」


 すると、突然、あたりに風が巻き起こった。

 まるで竜巻みたいな突風。


 でも、この感じ、どこかで……あ、そうだ、ミアちゃんとリュートくんが、部屋に現れた時と同じなんだ!


「あ、アランくん……?」

「残念だなぁ、せっかく仲良くなれたのに」


 恐る恐る、アランくんを見つめれば、アランくんは、どこからか、分厚い本を出現させていた。


 そして、そのページを開き、なにか呪文のようなものを唱えると、その瞬間、私の足元に、緑色に光る魔法陣が現れた。


 うそ! アランくんは、本当に魔法が使えるの!?


 じゃぁ、ミアちゃん達を過去に飛ばしたのも……っ


「やめろ!」


 すると、私が危ないとおもったのか、日下部くんが、飛び出してきた。

 私を守るように、アランくんの前に、立ち塞がる日下部くん。すると、アランくんは


「あれ? もう一人いたんだ。恋ヶ崎さんの友達?」


「なんだっていいだろ。それより、お前、本当に悪魔なのか!?」


「あぁ、僕が悪魔だってことも知ってるんだ。そうだよ。僕は、魔界の王の息子。第13代目の王位継承者で……って言っても、今は家出中なんだけど」


「家出中!?」


「うん。お父様とケンカしちゃって、僕これでも追われてる身なんだ。それで? 僕のことを、君たちに吹き込んだのは誰?」


「え?」


「颯斗や彩芽が、僕の秘密をしゃべるわけないし。他にいるはずだよね、僕の秘密をしってる人物が……しっかり、消しとかなきゃいけないからさ。教えてくれないかな?」


「……け、消す?」


 な、なにそれ?

 まさか、消すって、ミアちゃんを!?



 

 

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