三年三組の見えない探偵

kio

三年三組の事件

第1話 クラスで一番目立つギャル

高校受験でピリピリしつつある五月の、とある三年三組の教室。放課後、クラスの中心的人物である花咲華は教室内に戻って来るなり叫んだ。


「まじでやばい! みんな帰るの待って! やばいから!」


花咲の言葉はやばいしかない。しかしクラス内でとても目立つ彼女の声を聞いて、無視できる生徒は少なかった。

花咲はウサギのような髪型をして、ブラウスの下に派手な色のキャミソールを着ていてプリーツスカートは短い。学校指定外のリボンと靴下でスカート。化粧しているのかと思いたくなるような派手な顔立ち。名前通りに華が有り、性格は素直で明るいため男女共に好かれている。


「私のサイフ、なくなったの! ちゃんと貴重品として預けてたのに!」


花咲の言うやばいとは紛失のことだったようだ。

このクラスでは朝のホームルームに担任が貴重品を預かる。担任が大きな巾着を広げてそこに入れてもらいひとまとめにして、教室内の金庫に入れる。金庫には鍵がかかっており、鍵を持っているのは担任と副担任だ。そして帰る前に金庫を開けて、巾着から返品する。

過去に学校内でなんらかの紛失問題があったのだろう。それを警戒しての対策だ。


「なんでか私の財布が返されなくて、さっき丹波先生に聞いたの。そしたら『最初からそんなの預かってなかったんじゃないか』って。だから誰か、私が財布を先生に預けているところ見てない?」


貴重品預かりは毎日のこと。毎日の習慣になると細かな記憶もあやふやになりがちだ。とくに記録も取らないため、担任である丹波は花咲の勘違いではないかと言ったらしい。


「わたし見てたよ。細川君のあとに花咲さんが並んで、その後に先生が持つ巾着に入れてたよね?」


女子のクラス委員である平が言った。日頃真面目で信頼のある平の証言なので、疑うものはいない。その次に視線が集まったのは、話にあった細川だ。彼が花咲の前に財布を巾着に入れた。


「俺も覚えてる。俺が財布を巾着に入れた時、花咲が後ろに並んでた。巾着に入れるとこまでは見てねーけど」


細川からの証言。これで花咲の勘違いではなくなった。そして盗難事件である可能性が高まった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る