第7話 父とも仲良くなろう

 さて、自然に目が醒めちゃったので起きることにした。視界に入る小さな手。急に低くなった視線には違和感かあるが、そのうち慣れるだろう。




 ノックの後にマーサが入ってきた。




「おはようございます、お嬢様」




 今日もマーサのお辞儀は綺麗である。マーサを真似てお辞儀すると少しだけマーサが笑った気がした。




「お上手です。旦那様はすぐ出ていかれますので、すぐ着替えて玄関で待ちましょう」




 マーサはテキパキと私を着替えさせ、素早く私を抱え上げると玄関まで移動した。




「申し訳ありません、お嬢様。今日は予想より旦那様が早く出るご様子ですので」




「ううん、ありがとうマーサ」




 私は抱え上げたことよりも凄い速度で走ってるのに足音がしないマーサにびっくりしたよ。


 めっちゃ速かったよ、マーサ。


 何者ですかね、マーサ。詮索はしないけどね。




 そうこうしてるうちに父が来ました。


 父は兄と同じ髪と瞳で青銀の髪に緑色の瞳。無口・無表情がデフォルトな男性であります。うちの父は長身です。190ぐらいあります。めっちゃ見下ろされています。


 正直めっちゃ怖いです。


 めっちゃ眉間にシワが寄ってて不愉快そうです。






 結論!父怖ぇ!!






 しかし、ここで引き下がるわけにはいかない。父とも仲良くならねば!




「…何故起きているのだ、ロザリア」




 おお、喋った。声聞いたのもいつぶりだろう。低くてセクシー…と現状から逃げている場合ではない。相手は出勤前だ。用件は手短に。




「おとうたまにいってらっちゃいちにきまちた」




「…」




 父が、止まった。




 瞬きもしてない。




 父、息もしてない




 涙目でマーサに助けを求める視線を送ると、マーサといつの間にか来ていた父の乳兄弟兼侍従のアークが同時に頷き、




「「大丈夫」」




 とハモった。私より父との付き合いが長い2人が言うなら大丈夫かもしれないが、息はマズイのではないだろうか。




「…ぷはぁっ!はぁ、はぁ」




 あ、父蘇生した!床に膝をついてめっちゃ苦しそう!慌てて駆け寄り背中をさする。しばらくむせる父。ひたすら背中をさする私。なんでこうなった。




「…何故」




 ようやく呼吸が整った父が話しかけてきた。私からしたら父の反応が何故だがな。




「とうたま、いつもおちごとおつかれさまですっていいたくて。でもずっとあってないからはやおきちまちた」




「がはっ!」




 顔をおさえてめっちゃプルプルしてる父。見かねたマーサがそっと父の奇行を解説してくれた。




「お嬢様、旦那様は感激しておいでです。面白いですし、最近お疲れでイライラされて当たられるのもいい迷惑なので…むしろもっとなさってください」




おい。マーサ、本音がだだもれですよ!うぅ…父がすいません。しかし、父は喜んでいるのか。


 ねぎらわれたぐらいでチョロいな父!


 チョロさで兄に負けてないよ!!


 血筋?血筋なの?しかもその理論で行くと私もチョロいの?…明らかに空回る私の脳内を宥めつつ、父に話しかけた。




「とうたま、いってらっちゃい」




 さらにほっぺにちゅーである。父は耳まで朱くなり、蛇行しながらなんとか馬車に乗り出かけていった。大丈夫…かな?アークさん、後は頼みました!




 遠ざかる馬車を眺めつつ、手を振った。




「お嬢様、グッジョブです。これで少なくとも今日1日、旦那様はご機嫌です」




 グッと親指を立てるマーサ。




 父、どんだけマーサに迷惑かけたの?聞くのが怖いと思った朝でした。


後書き編集

 実はアークとマーサが姉弟なので、父とも長い付き合いです。




 父はよく仕事の愚痴をマーサに言うため不機嫌な父の相手は面倒だと思っています。


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