第2話 ジェリーが死んだ②

 ジェリーが死んでしまったことをあらためて確認してすぐ娘を呼んだ。毎日のように点滴に付き合ってくれ、ジェリーとはケンカ友達のような娘。ジェリーが死んだとわかると娘は亡骸を抱き上げた。するとジェリーの口から吐ききれなかった血と尿が溢れた。


娘からジェリーを受け取り、ジェリーの体を拭く。こびりついた血が残るもののある程度は綺麗にしてやれた。


体が弱る前のジェリーは本当に美犬だった。親バカならぬ飼い主バカではあるが顔立ちがよく、散歩の時はマジマジと褒めてくれる人が少なからずいた。往時の可愛さには程遠いが許してほしい。


私は謝りながら棺を用意した。まさか今夜死ぬとも思わず家中の段ボールを見繕った。車を持たない私はジェリーをこの中に入れてカートに括り付けて電車に乗り、動物霊園に向かうことになる。想像したがこれは嫌だった。ジェリーは物ではない。大切な家族なのだ。私は別のものを棺がわりにすることにした。


体が弱るにつれジェリーはリュック型キャリーで伏せの姿勢でいることが辛くなってきた。病院の帰り道、キャリーからキャンキャンと鳴くようになった。そこでジェリーが横たわることができるほどの大きなキャリーを最近買ったところだった。


この大きなピンクのキャリーは専用カートにセットすることもできた。私はピンクの似合うジェリーにぴったりのこのキャリーをジェリーの棺桶に選んだ。ジェリー用のタオルを敷いた上に真新しいチューリップ柄のフカフカのバスタオルを敷き、その上にジェリーを横たえた。ジェリーの周りはジェリーの首輪やお気に入りの洋服、おもちゃ、オヤツを入れた。そして保冷剤もたくさん。


死んだのは夜。

次の日、動物霊園に電話をした。

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