EP2 匿名希望《ノーネーム》

 試合会場に向かうまでの間、怜奈さんはこれから準決勝で戦う二人の選手のことを教えてくれた。


 一人はryoと並んで今大会優勝候補の一人と噂されていた『ぬらぽうみ』選手。彼女は女性の動画配信者で、若くしてチャンネル登録者百万人超えを達成しており今注目されている配信者の一人……らしい。


 優れたルックスを持っている上にゲームの実力も高く、ファン層にはライト層からゲームガチ勢まで幅広く、正にこれからの日本を牽引するRe-sportsプレイヤーの一人、と言われているらしい。


 そしてそんな彼女の対戦相手だが、なんと怜奈さんもよく知らない人らしい。匿名希望で参加し、素顔も隠して参加しているという、まるで俺みたいだな。


 使うキャラは至って普通の戦士タイプらしく、変わったスキルも使わないが操作が他の選手たちよりもズバ抜けて上手いらしく、ここまで攻撃を一回もマトモに攻撃を食らわず勝ち進んでいるらしい。こっちも要注意だな。 


「……しかし決勝戦の相手は順当にぬらぽうみさんだと思います。確かに『匿名希望』さんの戦闘技術は凄いですが、構築ビルドは素人同然でした。あれでは性能差でぬらぽうさんに押し切られてしまうでしょう」

「まあ腕だけで勝てれば苦労しないからな」


 いくらリアオン熟練者でも、初期武器初期ステでは100レベルキャラを使う初心者にも勝てないだろう。いくら操作が上手くても、装備とスキル構成がしっかりしてないと腕前が下の相手にもあっさり負けてしまう。

 逆に格上の相手にも工夫次第では勝てるってことだ。そこがリアオンの面白い所だな。


 そんなことを話しながら試合会場に到着すると、そこでは両選手の試合がすでに始まっていた。

 試合展開はぬらぽうみ選手が優勢に見えた。手にした大きな両手斧を振り回し、匿名希望選手のキャラを追い詰めている。


 それを見た俺は驚き、呟く。


「確かに巧いな……」

「でしょう? ぬらぽうみ選手は私も注目して」

「いや違う、俺が言ってるのは匿名希望の方だよ」

「へ?」


 一見すると試合の主導権を握っているのはぬらぽうみの方に見えるだろう。派手なスキルを多用し、匿名希望の反撃を許さず試合を運んでいる……ように、見える。


「あの匿名希望って奴、ギリギリに見えて全然攻撃に当たってない。。ぬらぽうみ選手も焦ってるだろうな」

「そんな馬鹿な……!」


 怜奈さんは驚き試合をよく観察する。

 すると彼女も俺の言ったことを理解したようで信じられないといった感じで呟く。


「た、確かに。ギリギリまでひきつけてから避けているので当たっているように見えましたが、一撃たりとも当たっていません……! なぜ反撃せず回避に徹しているのでしょうか」

「これは俺の予想だけど、きっとあの選手は煽ってるんだ」

「煽る、ですか?」

「あー、そっちの煽るじゃない。もっとポジティブな方だよ。焚き付ける、と言った方が正しいかもな。あいつはぬらぽうみ選手に要求してるんだ『もっと良いプレイが出来るはずだ、君ならもっと上を目指せるはずだ』ってね」

「それは……なんともむごい話ですね」

「ああ、間違いない」


 何て独善的な行為なんだろうと俺も思う。

 そんな事せずに早く決着を着けるべき。俺じゃなくてもそう思うだろう。しかし当の本人『ぬらぽうみ』選手は違った。


「はあ、はあ、そこっ! くっ、これならどう!?」


 彼女はイライラした様子など全くなく、むしろ今の時間を楽しんでいるようにも見えた。怜奈さんもそれを感じ取ったみたいで眉をひそめている。


「一体なぜあの人は楽しそうにしてるのでしょうか? 馬鹿にされていると思っても良さそうなものですが」

「……きっとあの人はそんな事感じる余裕すらないんだと思う」

「それはどういう意味ですか?」

「見てくれ、あの人最初に見た時よりどんどん上手くなっていってないか?」

「そう言われてみれば……」


 ぬらぽうみ選手の攻撃は以前当たっていない。しかし攻撃を繰り返す内、どんどんその攻撃は速く、鋭いものになっていってる。

 その成長速度は凄まじく、まだ俺はこの試合を見て三分ほどしか経ってないが明らかに最初に見た時より上手くなっている。


「成長する嬉しさが強くて悔しさを感じる暇なんてないんだと思う。それだけ相手の選手の器が大きいんだ」

「……ということは匿名希望選手はぬらぽうみ選手より数段強いということですよね? 一体何者なのでしょう、想像もつきません」


 それは俺も同感だ。俺はリアオンで一番ストーリーを進めてる廃人集団『攻略組』のメンバーを知ってるが、戦い方を見るにそいつらの誰かってわけでも無さそうだ。


 一体何者なんだ?


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《運営メッセージ》


いつも『リアライズ・オンライン』をプレイして頂きありがとうございます。

この度、プレイヤーの皆様の応援おかげで、「カクヨム」「小説家になろう」二つの配信とうこうサイトにて日間ランキング一位を取ることが出来ました。

誠にありがとうございます、スタッフ一同喜んでおります。

そんな感謝の気持ちを込めまして本日は予定より一話分多く投稿アップロードさせて頂きました。

お楽しみいただけましたら、ぜひページ下部の【⭐︎⭐︎⭐︎】ボタンを押して評価の方、お願い致します。


それでは引き続き『リアライズ・オンライン』をお楽しみください。

そしてこれからも変わらぬご愛顧の程、よろしくお願い致します。

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