第23話 ダンジョンで謎解き

「それにしても不思議だよな。渦巻きの真ん中にこんなのがあって、それでいて寒くないなんて。」


俺は大事なところだけ隠したほぼ全裸スタイルのまま、あたりを見渡す。


海の上にぽかんと浮かんだまあるい島。周りは渦巻きで荒れているのにも関わらず、何故か水が入ってこないから不思議だ。


そして一番気になるのは……中心に空いている穴。


「全部、神剣の力によるものなのでしょうかね。」


「多分な。すげーよな神剣。」


俺はノースと会話を交わしながら、中心に向かう。


「これあれですよね。」


「あぁそうだな。」


俺たちは島の真ん中に空いた穴を指さして、声を揃えて言う。


「「ダンジョン」」


階段状に掘られた穴は、暗くて見えないくらいには奥が深い。


「この中にあるんだよな。」


「た、多分そうですね。」


俺たちはその真っ暗な穴の中を暫し見つめる。


「……行くか」


「頑張りましょう」


正直言って、怖い。

なんか暗いし、神剣だし。

そんな簡単に手に入らないのはわかりきったことだから。


「火〜をつけて、参りましょ」


適当なリズムの歌で気を紛らわせて、俺は松明片手に階段を降りる。


全裸にはなるが、他の部分は抜かりなく準備をしてきたのだ。濡れないようにちゃんと対策をしてね。


服が濡れるってのは盲点だった。別に露出癖はないので、次回からは服も持ってくることにしよう。


てかそもそも、もうこんなことしたくないけどな。


「うぉお、なんかあるぞ」


空が見えなくなるくらいまで奥に進んだところで、行き止まりになっていて、その壁に何かが書かれていた。


「これは……?」


後ろから俺と同じようにビビり顔のノーズがやってきて、首を傾げる。


壁には大きく、


『パンはパンでも食べられないパンは?』


そう掘られていた。


「これは、なぞなぞだよな。」


「そうですね。しかも、かなり子供レベルの。」


俺とノースは壁の文字を見つめながら話し合う。

こんなのガキでも答えられるような、簡単ななぞなぞだろ。


神剣さん、もう少し頭使おう。というか、ちなんと守ろう?


「と、とりま、答えるか。」


「お願いします。」


俺はノースと頷き合って、壁に向きかえると大きく息を吸って、


パンはパンでも食べられないパンは、カビたパン。」


そう叫んだ。


「へ?」


ガチャーーン


その瞬間、俺の声がエコーがかかったかのように反響し、ノースの声と鈍い金属音が響いた。


「やっぱ開いたじゃん。簡単簡単。」


俺はまだ完全に開いていない扉をくぐり、奥へと進む。


やっぱそうだよな。パンはパンでも食べられないパンはカビたパンだよな。


食ったら腹壊すし。マズイしな。


「あれは答えとしていいのか……。普通、フライパンとかじゃないの?」


後ろでノースがなんか言ってるけど気にしない気にしない。俺はそうやって習って生きてきたから。


「元帥、今度は僕が先行きます。」


俺が鼻歌交じりに歩いていると、ノースが肩を叩いて言う。


「おうよ。これ、松明。」


「ありがとうございます。」


分かるぞ、なぞなぞ楽しいよな。


俺も昔、友達がいないときにいつも本片手にやってたよ…………この話やめようか。


「あっ、また壁。」


俺が一人で悲しくなっていると、前を歩いていたノースが立ち止まって言う。


彼……彼女の言うとおり、俺達の前には先程と同じように壁がそびえ立って道を塞いでいた。


どうしても、これまで男として接してきたから、彼って言っちゃうんよな。


「どれどれ、『カバが逆立ちするとどうなるか』こんなん簡単だろ。」


こんなの、さっきの同じくらいのレベルだ。


「で、ですよね。これくらい常識……カバが逆立ちすると、バカになる!!」


ノーズは自信満々に叫ぶが……


「あれっ?」


……壁はピクリともせずに動かない。


「お前何言ってんだ? カバは重いから逆立ちできねぇだろ。」


俺がそう言った瞬間、壁はまた鈍い音を立てて動き始めた。


「え? えぇ!!?」


「カバが逆立ちしてバカになるとか、そんな安直な。これはなぞなぞだぞ? カバって1トン超えるくらいには重いから、逆立ちなんてできないんだよ。」


驚くノースに、俺は当然とばかりに言う。


こんくらい常識だろ? もしかして、ノースって意外とポ・ン・コ・ツ?


「どんどん行くぞ!!」


「うぅ、絶対おかしい……」


俺はノースとともに、階段を降りていった。

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