第20話 衝撃の事実

「レッツラゴー!!」


「行きますっ!!」


俺とノース。お互いにお互いらしい言葉とともに、船から飛び降りる。


「ガンバーッ!!!!!!」


「死なないで下さい!!!!!!」


「帰ってこいよ!!!」


船の上からは船長を始めとした、海賊団の皆さまが手を振っている。


「うえっ、つんめてぇ!!」


流石に冬の海。冷たさの度合いが段違い。マジで意識持ってかれるような、そんな冷たさ。


俺の細胞が生きてるのか心配になるレベル。


「ノースッ!!」


「元帥っ!!!」


俺たちは渦巻きに飲まれながらもお互いに手を伸ばして、なんとか手を繋ぐ。


「溺れんなよっ!!」


俺はすぐそこにいるであろうノースにそれだけ言うと、息を大きく吸って水の中に潜った。


渦巻きは予想の何杯も強い力で流れている。俺たち人間なんて一瞬で流される。


それに息が吸えないのが問題だ。運良く顔を出せても、波が絶え間なく押し寄せているから口に入ってくる。


なので、ダメなら元からやらなきゃいいということで、俺は潜っているわけだ。


こんなに勢いが強いんだから数分のうちに中心まで流される……と、信じている。


「あぶぉっ!!」


俺が潜ってから数十秒経たないうちに、ノーズと繋いでいた手の片方が剥がれて、片腕だけの状態になる。


ノーズの方からなんか声聞来たが、マジで大丈夫だろうか。


このまま手が離れて、気づいたときにはノースと離れていたとか笑えない展開はやめてほしい。


「うぐっ……」


俺はカエルを轢き殺したような声を上げて、なんとか繋がってる右腕を手繰り寄せ、ノースの体を見つける。


すまん


心の中で謝って、ノースを抱きしめる。


別に好きで男に抱きついてるわけじゃない。この非常事態の苦肉の策だ。だから許してほしい。


「あぼぼぼばばび」


俺は溺れながらノースとともに流されていった。









「ぷはっ……はぁ……ハァ…………死ぬ」


俺はなんとかたどり着いた陸地の上で、横向きになりながらつぶやく。


誰だよ数分でたどり着くとか言ったやつ、体感10分は超えてたぞ。


体感だから実際にはもっと短いとは思うが、マジで死にかけた。


「ノースも……無事か。」


「な、なんとか……」


俺が水を吸って重い服を脱ぎながら言うと、ノースが弱い声でつぶやいた。


「マジで、もう二度とやりたくねぇわ」


俺はパンツ以外を脱いで、水を絞りながら言う。


「そうですね……って、え!!!?」


全裸になったのに何故か寒くないなと俺が疑問に思っていると、俺の方を見たノースが驚きの表情を浮かべる。


「どした?」


「げ、元帥なんで脱いでるんですか!?」


何に驚いてんのかわからない俺に、ノースは目の前に手をかざして指の間から見るという、聞いたことはあるが見たことないランキング17位の格好をしながら言う。


「いや、寒いし。濡れてるし。男同士だし? お前も脱げよ。」


別におかしいことないだろ? と、俺は首を傾げるが。


「ば、ば、ば………バカっ!!!」


「へぶしっ!!」


ノースは顔を真っ赤にして、俺の頬を叩いた。


ワッツ? 俺はなんで叩かれた?

マジで、俺何がやっちゃいましたか状態。


男同士なら普通じゃね? なんなら俺、船員たちと裸のお付き合いした風呂入ったことあるけどあるけど。


「ぼ、ぼ、ぼ、僕……」


「僕?」


ノースはプルプルと肩を震わせながらうつむくと……


「女ですっ!!!!!」


「ほぇぇ?」


そんな衝撃の事実を告げた。


ま、マジ?

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