言葉の扱い方(法王の逆位置)

 言葉は使う人によってその姿を変える。時には優しさに、時には凶器に。誰でも使えるからこそ、うまく付き合っていかなければならない。


「言葉って難しいね……」


 占いをするにあたり、言葉選びはかなり重要になってくる。伝わり方が人によって変わる為、いつもより慎重に選ばないと、誤った方向に捉えられてしまうこともしばしば。占いが人によって違うのも、そういうところからきているのかもしれないと、最近は思っている。


「あれ、珍しいね主がそんな深刻そうな顔して。まあ何時もの事だけどね♪」

「はいはい、いつもこんな顔ですよー」

「……何か考え事かい?」


 態と噓を使い、人々に嘘の正しい使い方を教えようとしている彼は、人のわずかな変化に過敏に反応する。それだけ人の事をよく見ているということなのだろうなと感心しつつ、何と無く彼に聞いてみることにした。


「言葉選びって難しいなって思ってたの。解説をするときもそうだけど、人によって捉え方が変わるし……かと言ってオブラートに包みすぎても真に伝えたいことが伝わらないようじゃ意味がないから」

「人の数だけ個性があるから、捉え方もまた人の数だけあると思った方がいいかもね。だから面白くもあり、難しくもあるんだけど」


 懐からノートと鉛筆を取り出した彼は、サラサラと何かを書き始めた。不思議に思っていると、書きあがったのかノートを私に見せてきた。

 そこにはたくさんの丸印が書いてあり、丸印の中心には『比較型』や『支配型』など、様々な型が書かれている。


「こうしてパターン化することはできると思うよ? 完全一致ではないにしろ、似たような感性を持っている人は多いからね」

「確かにそうかも……よく雑誌やテレビでも○○タイプとかいうからね」

「そうだね、個を見ることが大前提ではあるけれど、区分分けをしながら見た方が整理もしやすい。人と向き合う時も、自分と向き合う時もね」


 誰かと向き合うときは当然、個と個にはなる。彼の言う通り、最も重要な事は個を見る事ではある。それに加えるようにして、その人のざっくりとしたタイプが分かっているほうが、話し合いの際にも判断がしやすいだろう。


「じゃあさ……自分に絶対的な自信がある人に対して、何か意見を言うときってどうしたらいいかな?」

「嗚呼、たまにいるよねああいう人。自分が正解だと思っている人にとって、他人からの否定や意見は攻撃として捉えられることが多い。ストレートにいうのは正直お勧めしないし、かと言ってオブラートに包んでも理解はされないだろうね」


 自分が全てだと思っている人は、人の話を聞かないことが多いため、勝手に突っ走ったり巻き込んだりする。その人だけの問題であるならまだいいが、巻き込まれる側はたまったものではない。かといって意見を言おうものなら、途端に不機嫌になったり言い訳をしてきたりとかなり面倒なことになる。


「だから、その特性を生かしてあげるんだよ。そういうタイプは逆におだてに弱いから、一旦相手を褒めてから、その努力が報われていない事を伝え、その上で改善案を提案する……自信があるからこそ更に上を目指したいという向上心に刺激を与えるのがいいと思うよ」


 まあそれでもダメなときはだめだけどね♪ と、無責任な発言を残し、彼は颯爽とその場を後にするのだった。

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