干渉罪(太陽の逆位置)
何がきっかけとなるかは分からない。自分にとっては些細なことだとしても、人にとっては大事だと感じることもある。
「……あの、これはどういう状況なの?」
毎度恒例の挨拶回りをしに来た私の目の前には、壮絶な光景が広がっていた。地面に倒れている黒い物体と、それを冷めた目で見降ろす地底人……こと、『太陽』の逆位置。私がこちらに来るまでの間に何があったのか、想像が追い付かない。
「あら、主様……今取り込み中なのでお帰り頂ける?」
私に気が付いたのか、彼女は口元だけで笑顔を作りながら言い放った。その気迫に圧倒された私は、いったん彼女の怒りが落ち着くのを待とうと思い、自室へ戻った。数時間くらい空けてから再度訪れると、何事もなかったかのように椅子に座り、ニコニコと笑っている彼女が目に入った。
「ようこそ地底へ。歓迎しますわ主様」
「ありがとう……あの、さっきの事聞いてもいい?」
「嗚呼、先程はお越しいただいたのに申し訳ございませんでした。もう問題はないので安心してくださいね?」
彼女の中ではとうの昔に終わったことだとでもいうように、それ以上を話そうとしない様子に困惑しつつも、これ以上の詮索は危険を判断し何も聞かないことを決めた。たわいもない話をしつつも、周りを頻りに気にする私の様子に、彼女は口を開いた。
「そうですわ主様、私不思議な夢を見ましたの」
「あ、そうなの? どんな夢?」
「私が何時ものように過ごしておりますと、黒い影のようなものが声をかけてきたんです。私は話したくないと思って黙っていたら、何度も何度も声を掛けて来て……それで私、嫌になってその影に相応しい罰を与えたのです。そうしたら、やっといなくなってくれて……そんな夢でしたわ」
それはきっと、先程私が見た光景の事だろうとすぐに分かった。彼女はそれを夢だと表現し、どうでもよさそうな表情で淡々と話した。ぞっとしながらも私は必死に話を合わせつつ、こう質問した。
「それは確かに不思議な夢だね、ところでどんな罰を与えたの?」
「その影は、罪を犯しましたので、牢獄に入れましたの。きっと今頃熱い熱いと言いながら、消滅しているでしょうね……ふふふ」
「それって……どんな罪?」
「干渉罪、ですわ。主様ったら、不思議なことをお聞きになるんですのね……ふふふ」
後日、彼女の言っていた牢獄がどんなところなのかを、太陽さんこと『太陽』の正位置に聞いたところ、彼女は少し悲しそうな表情をしていった。
「あの子の世界にはね、主の世界でいうマグマのようなものがあるの。あの子とそのマグマは連携しているみたいで、あの子にとって許せないことが起こると、一気に噴き出して触れたものを溶かしてしまうのよ。貴女はないと思うけれど、怒らせないようにしてね?」
彼女を絶対に怒らせてはいけない、そう強く思った一日であった。
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