女王への手土産(女帝の逆位置)

「女王様こんにちは」

「あら、だれかと思ったらいつも下らない話ばかりする主じゃない。また下らない話を聞かせに来たのかしら?」


 女王様の部屋を訪れるとき、女王様への捧げものを用意しなければならない。その暗黙のルールを守るために、私はあるものを用意していた。


「何時もなんだかんだ言って話聞いてくれるもんね、ありがとう。今日は日ごろのお礼も兼ねて試してほしいものを持ってきたんだ」

「あら、この私に試してほしいものだなんて怖いもの知らずね。気に入ったわ、見せなさい」


 気品に振舞っている彼女だが、夜になると悪夢にうなされてしまうことがある。その度に呼び出され、彼女が安心するまで話をしたり、時には安眠グッズなどの差し入れをする。その甲斐あってか、最近は悪夢を見る回数が少なくなってきたようだ。

 そんな彼女にと、今回私が用意したのは、安眠効果があるとされているラベンダーの香りがするお香。眠る前に焚き、リラックスできたところで眠りにつけば悪夢を見ないようになるのではないかと考えたのだ。

 恐らく扱いには慣れていないだろうと考えた私は、初心者でも扱いやすい円錐タイプのお香にした。女王様から許可を貰い、火をつけると部屋全体にラベンダーの良い香りが広がった。


「いい香り……」

「火を使うから、ちゃんと火の元消してから眠りについてね。なくなったらまた持ってくるから」

「あら、気が利くわね。せいぜい私のために働きなさい!」


 お香にすっかりご満悦の様子の女王様に、私は安堵するのだった。

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