秋刀魚の煙は鰯雲

課題「秋刀魚」


タイトル『秋刀魚の煙は鰯雲』


人物

北原雄三(33)会社員

北原絵美(4)その娘

北原春絵(30)その妻


○北原家・庭(夕)

   北原雄三(33)、七輪で秋刀魚を焼い

   ている。恐る恐る近づく北原絵美(4)。

   死んだ秋刀魚の目。絵美、あとずさる。

絵美「やっぱいらない!」

   葉の擦れる音が聞こえ、落ち葉が舞い

   上がる。煙が絵美の方へ流れる。

絵美「わーん!」

   と、泣きながら、庭にでてきた北原春

   絵(30)の元へ駆け寄る。絵美を抱き

   かかえる春絵。それをみて笑う北原。

春絵「いい匂い」

絵美「やだー! くさいぃ! もー!」

   北原、油ののった身を箸でつまむ。手

   を受け皿にし絵美の元へ運ぶ。目を閉

   じて喚く絵美の口へ秋刀魚をいれる。

絵美「んーんー! ……ん?(目を開ける)」

   咀嚼する絵美。微笑む北原。

北原「うまいだろ?」

   絵美、黙ったまま涙目で北原をにらむ。

   飲み込むと、口をあがっと開ける。

北原「あはは! パパも秋刀魚好き」

   七輪の元へ向かう北原。

絵美「好きじゃないもん」

   北原、再び身を取る。突如風が吹き、

   煙が北原にかかる。

北原「ぎゃっ」

   北原、秋刀魚の身を落とす。

絵美「あーっ! えみのさんまーっ!」

   煙が空へのぼる。鰯雲の浮いた高い空。

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