第4話ー報いですー

「おい、オスカー!兄だろうが関係ない!俺の事情に口をはさむな?その女と俺の問題だ」



そうアルベルト王子が言った瞬間

オスカー様が殴り付けた、間髪入れずに一瞬で

その表情は怒りが込められているが冷酷だった


「な…なにを!?」


アルベルト王子の胸ぐらを掴み

オスカー様は再度拳を握った


「二度と彼女を見るな、名前を呼ぶことも話しかける事も許さん」


「は、なにいってやがる!!こんな事してタダで済むと…」


「これは彼女のメイドに手を出した分だ」



鈍い音と共に、アルベルト王子が殴りつけられる

血が床に飛ぶ


「これは彼女を苦しめた分だ」


殴られ、再度血が飛び散る


「彼女を痛めた分」



歯が抜け落ち、コロコロと転がる


「彼女を悲しませた分」


鈍く重い音が響く

転がる歯の数が増えた

オスカー様は冷酷に冷たい瞳で再度拳を握る



「おやめください!オスカー様!充分です!私はもう充分です」


私は慌てて止めた

このままでは本当にオスカー様はアルベルト王子を殺してしまうからだ


「すまない、つい頭に血が上ってしまった」


落ち着いたのか、オスカー様は私を抱きしめながらそう言った


「お、おまへぇ!!」


アルベルト王子は傷だらけになりながらも叫ぶ

歯が抜けた影響で上手くしゃべることはできないようだ


「おれひゃまに手を出したんひゃ!!どうなるか分かるよひゃ?この国は二つの派閥でわかれへる…第一王子派閥と第二王子派閥だ…お前は暴力で解決する王子だと皆にひらしめてやる…おまへと一緒ひその女を処刑してひゃる!!!」


ボロボロになり、私に命を救われながらもまだそんな言葉を吐き捨てるアルベルト王子だが

オスカー様はため息を吐くとポケットからあるものを取り出す


「アルベルトよ、貴様は口は達者だが相変わらず頭はないな…なんの算段もなくこんな事をすると思うか?」


オスカー様は手に持つ道具のスイッチを押す

すると先ほどまでの一部始終の声が流れた


アルベルト王子がメイドに手を出したことも、傷を理由に私に脅迫したことも


「あ、あ…あ…」


全てを悟ったのか、アルベルト王子の瞳から生気が消えていく


「隣国より取り寄せた魔法具の録音機だ、王女に婚姻を申しこまれた時にもしよければと貰っていたがこんな事で役に立つとはな」


「………」


「ようやく分かったか、この証拠は確実にお前が破滅する証拠だ………お前が先程ルナに助けられた時に謝罪すればこの証拠は捨てる気だった、お前は弟でもあるからな…だがもう手遅れだ」



「がぁ………あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


狂ったように泣き叫ぶアルベルト王子に先ほどまでの余裕はもう存在しなかった


「ここではうるさいな、ルナ、寝室を移動しよう」


「は、はい…きゃ!!」


オスカー様は私をお姫様抱っこで持ち上げると颯爽と部屋を出ていく

その力強さに赤くなりながら私はそっとオスカー様に寄り掛かった








ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



静まり返った部屋の中

アルベルトは力を失ってうなだれていた

だがその目は憎しみで溢れており、腰の剣に手を伸ばしオスカーの背中を見つめていた


せめて落ちるのなら巻き添えにしてやる

ぐちゃぐちゃに刺し殺して!

あの女の目の前で殺してやる!!!

そう思って剣を抜いて走り出した瞬間







「させませんよ」


突然、アルベルトは宙に浮いた

ルナのメイドであるマリアンヌが先ほどとは別人のような達人技によって投げ飛ばしたのだ

宙に浮いたアルベルトを蹴り飛ばす

大きな音を立ててアルベルトは転がり落ちた


「これ以上は私が許しません」


マリアンヌはそう言って髪をくくった

その表情は歴戦の戦士のようであった


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