第3話 コメント欄

  今回からDMには『』をつけています。


―――――――――――――――――――――――


 コメント欄が盛り上がる理由は明白だった。


 弱小チャンネルのコメント欄に大物Vtuberが現れる、そんな奇跡じみたことは普通ならあり得ない。


 しかもその内容がコラボをすると言った内容なのだ。


:本人⁉︎

:マジか!

:みこおる!

:てかコラボってマ?

:↑それ気になる


「えっと……コラボの話は本当だよ。風花さんからお誘いされたんだ。詳しい日程とかは決まってないから、もう少し待ってね」


:いくらでも待つ

:全裸待機


 コラボの剣について言及せねばと思い、私は咄嗟に口を開く。


 そのせいで自声が少し出てしまったな、と一人心の中で反省をしていたが、そんなことなど気がつくそぶりもなく、リスナー達はコメントの書き込みに勤しんでいた。


 「それじゃあ、最後に重大発表をしたけれど、今日はもう時間もいいところだから、配信はここまで! またねー。おやすみー」


速くなったコメントを横目に、配信を終了させる。


 配信の余韻を全身に感じながら椅子に寄りかかるが、私の頭の中にはやはり最後のコメント欄のことしか考えられなかった。


 彼女が現れた瞬間、見たこともない数が、まだ私の配信にコメントをしていなかった視聴者達が、流れるようにコメントを書き込んでいった。


 視聴人数90人、その殆どが彼女の言葉に反応したのだ。


 朝のDMではおかしな事を言ってきた変な人――しかし彼女は私なんかよりも、いや……他のどんな個人勢よりも人を魅了する力、存在感、運、を持っているのだろう。


――ピコンッ


 そんな彼女を超えたい、いや超えてみせる! 私の中の情熱が燃えたぎる中、スマホに一件の着信が入った。


風花巫心

『迷惑でしたよね? すみません反応しちゃって。』


『そんな事ないですよ、配信も盛り上がったので私からしたらラッキーな事です』


風花巫心

『そう言ってもらえるとありがたいです。それで今回はコラボのことについてお話ししたくて連絡したのですが、来週の日曜日の二十時からどうでしょうか?』


なんだ結構話が通じる人じゃん、と朝にきたDMを思い出しながら、私は二十時からは予定がなく暇である事を伝える。


風花巫心

『それでは配信は二十時からと言う事で。枠はとわさんのチャンネルで良いですか?』


 それどころか、弱小チャンネルに伸びる機会を与える素晴らしい人では? と私の中での風花さんへの評価が上がっていく。


 わかりましたと一言送ると、彼女からこの話の本命である言葉が帰ってきた。


風花巫心

『それでコラボ内容なんですけど――』


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