第9話 5-2

翌日、昼。


僕は父のケータイから、一本の電話をするつもりだ。

このケータイもいつまで維持出来るのか?わからない。ーー僕には時間がなかった。

まず山崎太郎と言う人物に僕は電話をかけた。

ケータイの電話帳に、彼ら四人の名前と番号が登録されていた。


山崎太郎。


三度目のコール音の後、鼻にかけるような女の声が聞こえてくる。

「ーーもしもし?」

「あなた誰?」

女はそう言いながら、タバコでも吸っているようにして、深い息を吐き出す。


ーー僕、間違えたかな?それとも電話番号が変わってる?


それはこっちが聞きたい。と思いながら、僕は聞いた。

「僕は斎藤と言います。山崎さんのケータイですよね?」

「そうよーー斎藤さん?ちょっと待って。太郎に変わるから」


受話器の向こうで女の声が言う。

「太郎ーー電話」

「はーい」


ーー良かった。間違いじゃない。


「もしもし、どなた?」

低めの男の声が響いてから僕は話始めた。

「いきなりのお電話ですいません。僕、斎藤秀二と言います」

「斎藤?ーーあー健吾の息子??」

「そうです。生前、父がお世話になったそうですので、父の事でお話しておきたい事があります」

「ーーどんな?」

不思議そうな声で、彼は言った。

「先月、父がなくなりましたーーそして、見てほしいものがあるので、一度お会いできないでしょうか?」

「あぁ、夜ならいーよ」

「それじゃ明日いいですか?」

「構わないよ。ーー何時にどこで?」

「夜8時、⚪️⚪️ファミレスでどうですか?」

「わかった。それじゃ明日、8時にーー」

声だけ聞いていると、とても誠実そうな人が思い浮かんだ。


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