第十七夜「ミッシング・リンク」

 物事には、つじつまが合わない事が多々存在する。たとえば、人間の進化。ダーウィンの進化論に当てはめると、空白になって繋がらない部分が出来てくる。何故、繋がらないかというと、化石が見つからないのだ。類人猿と人間の間の種族の化石は見つかっていない。人類の進化の真実は未だに謎のままなのだ。

 イーグルは宇宙の探査者とコンタクト出来た。彼等は、宇宙の成り立ちと進化を調べているらしい。しかし、前述のミッシングリンクの壁に阻まれてその探査は進んでいないらしい。

 「物事に矛盾が発生するのは当然の事だが、出来れば、そういう障害は発生して欲しくない物だ。面倒なことにはあまり関わりたくはないじゃろう、特にこんな歳になったらうまくいくことだけを願ってしまう」

 その星の年老いた科学者は深刻な声で更にイーグルに語りかけた。

「お主とこうして話しているのも宇宙の前代から見れば不思議なことじゃな」

「そうですね、私の星の住人は星の空気を震わせる事で声を出して意志の伝達をするのに、これはその方法とは全く違う方法での会話ですから」

「その通りじゃな。だが、儂等わしらも普通はお主たち同様、空気を震わせて話し、意志の伝達をするんじゃよ。あんたがと基本的には何も変わらん」

「地球で私の様な力を持っている者が何時頃現れたのかははっきりしません。人間が宇宙に定住する頃では無いかとは言われていますがこれも予測の域を出ていません」

「ふむ、非常に興味深い話じゃな」

「あなたは、不思議に思わないのですか?僕が、こうして話し掛けて居る事に関して?」

「驚く?何故驚かなければいけないのかね?」

「だって、普段とは違う意志の伝達方法でしょう?あなたは、それが出来る事に特別な意味が有るとは、考えないのですか?」

「特別な意味か。確かに何か有るのじゃろうが、それを驚けと言うには材料が不足しておる。ひょっとしたら儂に話しかけて居るあんたが、儂の頭の中で作られた架空の存在かもしれんからな。」

「架空の存在?」

「そのとおりじゃ。儂らは、あんたがたの実態を確認した訳では無いからね。こんなことは大っぴらに世間に知らせる訳にはいかんしのう」

「そうですか……ただ、信じてもらえますか?我々は、ちゃんと存在してるし、実態としても有る事を、地球という星も実態として存在してます、今のところですが」

「あんたがたを架空の存在とは思ってはいなさ。こうして、話掛けてくれてるのじゃからね」

 イーグルは老人の話に矛盾を感じ、こう質問してみた。

「架空の存在でないと思うのなら僕のことは信じてもらえるんですよね」

「信じる、どういう風にじゃ?」

「いえ、ですから、僕は実態であるということを」

「ふむ、お主を信じるのは儂の主観、こうして話すことが出来ているからじゃ。これ以上の証拠がない限るり、実態であるとは言い切れんのう」

「では、どうすれば信じてもらえますか?」

 老人は少しの間考えた。

「せめて、映像で見ることが出来れば、その可能性は高まるじゃろうな」

「間を繋ぐものということですか」

「さよう、目に見えるものは確証に近い、あくまでも近いだけじゃがのう」

 イーグルは言葉しか送ることが出来ない。いや、レーダースのメンバーにも映像を相手に送る能力を持つものは今のところ表れていない。

「申し訳ありませんが、それは出来ません」

「では、お主らにとってはそれが次の進化の課題ということじゃな。その時はちゃんと記録を残して何が起こったのかちゃんと後世に残すことじゃ」

 説教じみた言い方にイーグルは少し不快感を感じたが、それはもっともなことだった。人類が進化して、類人猿に分岐した時はそれを記録に残す力がなかったが、今、自分たちはそれをはっきりと書き残すことが出来る。これからの人類にとってそれは大切なことであり、文化として大切にしなければならないことだ。

「ありがとうございます。とても貴重なお話でした」

「うむ、少しでも役に立てば儂も嬉しい」

 通信を終えたイーグルは、早速今の内容を端末でまとめ始める。小さなことではあるが、この積み重ねが人類の未来を決めるのかもしれないかとも思った。

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