第十五夜「架空の星」

 バーチャル・架空空間・創造の産物。地球人類は何とか生き延びる為に、レーダースを組織して宇宙の探索を行っていた。しかし、まるで反対の道を選ぶ者たちも少なくない。

 イーグルは何時もの様に探査作業を行って居た。そして、彼の意思に反応した意思が有った。だが、イーグルは、首を傾げた。イーグルは呼びかける、意思は反応する。しかし誰一人答える者が居ない。確かに彼等は其処に存在する。しかし、誰も答えない。イーグルは歯痒はがゆさに我慢しきれなくなり、思わず叫んでしまう。

「頼むから誰か答えてくれ!」

「……」

 しかし、彼等は答えない。彼等は夢の中だった。そこは居心地の良い世界だからだ。自分が常にヒーローになれる。世界が自分を中心に回る。全ての権力を自分の物に出来る。但し、これは錯覚。単なる夢でしかない。彼等は夢の中。この世に実態は有るが、心は母親の中。そう説明すればよいだろうか。

 イーグルはなぜか焦りを感じた、これほどまでに自分だけの世界にのめり込めるものだろうかと。更に思う、彼等とコンタクトすべきかどうか。それとも、それを平和と感じるのならそのままにしておくべきか。余計な情報は与えない方が良いのではないかと

 しかし、文明とコンタクトしてしまった以上、イーグルはその文明の探査を行う義務がある。イーグルは何とか見つけて答えてくれそうな意思の話を聞いた。

「外に、惑星の外に出るだって?」

「ああ、そうだ。君達はそういう技術を持っているかい?」

「うん、ある意味持ってると言える。」

「どういう技術なのかな?」

「イマジネーションだよ、自分の考えが全てだ。そして、この世界では全ての願いが叶う。」

「それはバーチャルで、叶った様に感じるだけじゃないのかい?」

「いや、そんな事はないさ、これが我々の現実だからね。」

「そうか、満足しているのならそれで良いよ。」

 もちろん良い訳が無い。彼等は異聞の星に、いや、自分自身に引きこもってしまっている。非常に残念だがかれらに大きな未来の変化はないだろう。第一に、その変化すらのそんでいない。彼等と交信することはイーグルにも地球にも余り意味が無いと感じた。そして、

「もう少し、前を見た方が良い……」

 その問いに意思は答えた。

「前?見ているよ。我々の未来は明るく希望にあふれているさ」

「そうか、幸せにね」

 そう言い残して、イーグルはコンタクトする事を終了した。溜息が出た、まぁ、幸せは人それぞれ違うものだ。人に迷惑をかけなければそれはそれでよいのではないか、というのはあまり望まし結論とは思えなかった。

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