第八夜「評議会の決定」

 地球は連邦政府を樹立して、人種差別・貧困・あらゆる格差から脱出する事が出来たが、これを達成出来た原因は人口の減少防止の為の否応無しの対策だった。

 人種は混ざり合い、純粋な東洋人・西洋人は、ほぼ絶滅してしまった。イーグルも典型的な混血人種だったが、彼の様に遠い宇宙を見渡す力を持った者が現れ始めたのは新しい人間の進化だろうか。そして、いつか人間は肉体を捨てる日が来るのだろうか。

 知識人達で構成される地球評議会も新しい人類の進化の兆しに関して幾度もの論議を重ねて居た。

 基本的には、人類が進化する方向に有るのであれば、評議会はそれに口を出す事はしない。退化する方向に有っても、やはりそれに関して口を挟む様な事はしない。つまり、自然の意志のままにしておこうというのが大半の意見だった。しかし、これは、イーグル達の活動とは矛盾する。彼等は宇宙を意志の力で探査する事で、人類の生き残りを図ろうとする活動を行っている。これは評議会の自然に任せるという意見とは対極に有るのではないだろうか。

 今日もイーグルは暗く冷たく奥深い無重力の中に宇宙服と命綱だけで身を晒している。レーダースは若い人間が多かった。そして、比較的冒険心に駆られる事が有った。それに対して評議会は老人が多かった。彼等の大多数があまり変革を望んでは居なかった。いや、表向きは変革を望んでいるが、全て自然に任せたいと考えている。ただ、そこそこの権力を得た者はそれで満足し前進も後退もしたがらない。

 レーダースたるイーグルははたして何を求めて宇宙に意思を漂わせるのだろうか。彼等は何を欲しているのだろうか。知恵だろうか生きる力だろうか権力だろうか。

 新しい若い命は今を生き延びたいと思うが、その先に何が有るかを考えない事が多いかも知れない。それ自体が自分が生きて居る証しかもかも知れ無いからだからだ。

 イーグルは旅を続ける。肉体は其処に留まったままだが意思は宇宙の果てに達する程遠くに飛ばす事が可能だ。イーグルはその意思に全てを任せて宇宙を駆け巡っている。たとえ評議会がどんな結論に達しようとも。

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