第一夜「イーグル」

 その風貌は、東洋系を起源にしていると思われる輪郭だったが、瞳は深いブルーで輝く様な銀髪に、やや褐色掛った肌の色を持つ者だった。

彼の名はイーグル。かつて、地球の大空を飛び回った大きな鳥から取られた名前だった。

 イーグルは鋼鉄製の命綱を宇宙服のフックに繋ぐと目を閉じて無重力の空間に体を浸した。

人類の宇宙進出が絶望的と思われた頃、宇宙に出る事が特別な事で無くなった時、レーダースと呼ばれる深宇宙を見通す力の有る物達が現れ始めた。特に彼らは軌道エレベーターのステーション「ネオ・バベル」に勤務する者たちが多く、生まれながらに宇宙の闇に浸された者たちだった。

 物理的に高速を超える術を持たない人類だったが、意志の力は高速を超え、どんなに遠く離れた星にも瞬時にたどり着く事が出来、その星の生命とコンタクトする事が出来た。

 連邦政府は彼等の力を高く評価し特別な存在である事を認めた。彼等に一途の期待を託した。異星の技術を地球にもたらしてくれる事を。地球の生命体を深い宇宙に運ぶ手掛かりを探し出してくれる事を。

 彼らには、その対象に何が起こっても見守る事しか出来ないが話掛ける事は出来た。そして彼等から新しい技術を探り出す事が任務だった。しかし、レーダースの話には、悲劇が多かった。地球から遠く離れた星に住む生命達の悲劇、悲しみ、無念…

 レーダースは包み隠さずそれを連邦政府に報告した。連邦政府は彼等の話を全て信じる事にしている。イーグルの話も連邦政府は全て信じた。

残念ながらレーダースから未だに明るい報告はされていない。しかし、いつか地球人類が宇宙に進出する手掛かりを掴んでくれると信じられていた。

今日もイーグルは宇宙ステーション外の真空と無重力に体を浮かべて宇宙を探査していた。

 たとえ、絶望的な結果しか得られないとしても、やって見るしか無かった。何故なら地球の生命体も追い詰められているからだ。

今日も彼等は宇宙の闇を見続ける。たとえそれが悲しい結果となったとしても。


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