第53話 2章序章_麗華参戦

◆サクラ視点



 ああ……、どうしてこうなってしまったのでしょうか。

 ログハウス周辺には、火属性の巫女とその部下が取り囲んでいます。


 優莉さんは、重傷で意識がありません。

 その優莉さんを、アンネリーゼさんが介抱しています。回復には、もう少し時間がかかりそうです。

 そして……、火属性の軍勢を迎え討とうとしているのは……、麗華さん……。


 アンネリーゼさんの咄嗟の機転で、私も許可を出し、こちらの世界に来て貰ったのですけど、今は魔導具を装備して無双しています。正直強いです。レベル1からこれほどの実力を身につけているなんて。

 どんな幼少期を過ごして来たのでしょうか。

 才能もあり、英才教育を受けて来たんでしょうね……。地獄の特訓?


 麗華さんが、扇を振るうと焔が生み出されます。

 相手も火属性……。耐性があるはずです。

 その軍勢が、灰になって行く……。核崩壊が起きていませんか? 反物質とかが生まれていそうです。


『どれだけの火力差があるのでしょうか? 温度は怖くて……、計れません』


 そして、当然ですけど、レベルアップが凄いことになっています。

 もう秒単位でレベルが上がっています。

 レベルカンストも目前みたいです。


 正直、優莉さんの立場がありません……。

 レベルも、魔導具の腕も桁違いです。



 敵軍が、麗華さんを脅威と認めて、隊列を整えて来ました。

 正直遅過ぎます。軍の半分を失ってからの全力攻撃ですか?

 アホ過ぎです。戦略を知らなさ過ぎです。

 チンギス・ハーンに蹴散らされた、西欧諸国並みの戦略・戦術ですね。

 もう結果が、見えています。


『心配なのは、ログハウス周辺の森が、何処まで燃えずに残るかでしょうか……』


「それならば、水の根源に助けを求めたいと思います」


 アンネリーゼさんが、私に語りかけて来ました。


『確かにそうですが、来てくれるのでしょうか?』


「ユーリさんが、回復次第、救援を求めるべきかと。このままでは、周辺一帯が溶鉱炉です。ログハウスもなくなってしまいます!」


 確かにそうです。

 ログハウスを護る〈符陣〉も完璧ではなく、一定レベル以上の相手には突破されてしまいます。

 水属性の竜が襲って来た時には、優莉さんに迎撃をお願いした訳ですし。


 上空を見上げます。

 大錐型だいすいけいの陣で突撃を行うも、火属性の軍は、中央から真っ二つに切り裂かれてしまいました。

 いえ、燃やされて、消滅しているのかな……。同族性なのに、実力差が……。

 その後、包囲戦術に移ったようですが、麗華さんに一定以上近づくと、焔が襲うみたいです。

 あれですね、ファイヤーウォールというやつですね。デジタルではなく、アナログの。


 あ、麗華さんがついに右手に持った鞭を振り上げました。

 あれは……、もう止めようがないかもしれません。軽く振っただけで……、火属性の軍が吹き飛びました。


「……うう。サクラさん」


『優莉さん! 意識が戻ったのですか?』


「……どうゆう状況ですか?」


『アンネリーゼさんが、麗華さんに救援を求めて、火属性の軍と戦闘を行っています』


 優莉さんが、周囲を見渡します。

 一面の炎です。森林火災状態です。


「……不味くないですか?」


 そんな、普通のコメントを、今求めていません。

 誰の目にも、今いる地域一帯が、危険だと分かると思います。

 そして私は、動けない植物なんです……。

 私の命も、今日までかな……。


 いえいえ。諦めたらそこで終わりです。安○先生も言っていました。


『優莉さん。時間がありません。宝物庫に行き、〈空間操作〉の魔導具を使用してください! ログハウスだけでも守れれば、修復は後からでもできます』


 アンネリーゼさんが、優莉さんに肩を貸して、ログハウスに入ります。


「あれ? 宝物庫の鍵が開いている?」


「麗華さんが近づいただけで、ドアが開きましたけど?」


「……ログハウスの所有権は、僕にあるんじゃないんですか?」


『その話は、後で! 急いで!』


 確かにログハウスの所有権は、優莉さんにあります。ですが……、麗華さんが近づいただけで、ログハウスが降伏しました。

 その後、宝物庫の武器防具が、自動で麗華さんに装備されました。これは、私にも理解できません。優未さん以上かも?

 ヤンデレ力なんでしょうか?

 ログハウスは、怯えています……。



 この状況を読めていない人が、一人います。

 火属性の巫女さんです。

 悪魔みたいなシルエットで、翼があります。

 その悪魔さんが……、麗華さんに向けて罵詈雑言を投げかけ続けています。



 ――パリ、パリ、パリ……



 ああ……、余りにも高温になり過ぎて、周囲の気体がプラズマ化し始めたみたいです。もうダメですね。説明できません。誰か、量子力学に詳しい学者にでも説明して貰わないと、物理学的に理解不能です。最悪……、ブラックホールが作られたり……。


 火属性の巫女さんも、異変に気が付いたみたいです。

 口が止まりました……。頭悪過ぎます。一分ほどで、レベル差を覆さられたのを、今更理解したのかな?


「ふうおぉぉぉぉ~~~~~」


 麗華さんの獣のような、恐ろしい咆哮が木霊します。亜麻色の麗華さんの髪が、黄金色の発光を始めました。

 ヤンデレとは、恐ろしい人種なんですね。肉体まで変化させられるみたいです。


「ま、待て! それ以上温度を上げたら、原子崩壊が起きて……」


 もう、起きていますよ? 今更ですか?

 次の瞬間に、麗華さんが鞭を振るいました。

 空が光で覆われます。


 火属性の巫女さん、ご愁傷様。

 突然現れた、同属性の世界最強とエンカウントするなんて、私でも予想できませんよ。

 優莉さんは、レオンさんとエンカウントしましたが、アンネリーゼさんに導かれてですし……。不運ですね。


 昔を思い出します。麗華さんと優未さんは、どちらが強いのでしょうか……。



「……雷公鞭!!」


 麗華さんが、魔導具の名を語ると、空が光で覆われました……。





 短話です。ちょっと反応を見たいので、一話だけの更新になります。

 こんな話を予定していたのですが、時間がありませんでした。

 続きは……、のんびりと考えたいと思います。

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