第33話 アイテムの効果

学園に行くと、クリスティーナ様は、来なかった。

ライラさんは、相変わらず元気が良くて、今日から生徒会に行くわね、と言われた。

フリップ王子様も今日は、学園に来ていなかった。

生徒会に行けば、レイラ様がライラさんに仕事を教えて、喧嘩などない。二人は、あの時の話の内容も言わない。

ただ、レイラ様って見て覚えなさい、と言うタイプかと思っていたのに、親切丁寧に教えていた。

私と違うような気がする。

試験が終われば、もうすぐ冬季休暇だ。

その後、卒業式で入学式。


帰りの馬車は、夕焼けが美しく、眩しかった。

家につけば、慌しくみんな動いていた。

「どうしたの?」

と聞けば、

「わかりませんが、旦那様が長期で領地に戻られる事になりました」

と言われた。私は、

「ありがとう」

と言って執務室を訪れる。

扉をノックし、

「ルイーゼです、よろしいでしょうか?」

と言って待つ。

「どうぞ」

扉を開ければ、机に一つの根に沢山の芋が付いてる。

「もう収穫ですか?」

「あぁ、凄いだろう。一株にこれだけついてる。父上の使いが来て置いていった。これから出来高と種芋、配布量を計算しなきゃいけない。元カトロ領が不作だったからそこも支援が必要だし」

お父様がウキウキしてる。

「このお芋の量、やっぱりアイテムだったんでしょうか?」

と言えば、お父様は笑った。

「戦争は、聞かないし、でも領民が喜んでるって聞けば、嬉しいよ。幸せになるアイテムなら大歓迎だね。また見つけに行こう、ルイーゼ」

「はい、お父様。それに芋焼酎って作れますかね?」

「そうだね、発酵して、綺麗な水、我が領の名産になるかもしれない」

とさらにウキウキだ。元カトロ領は、山や森がある、お父様の算段に入っているのだろう。


「アイテムか」

芋って思ったけど本当にアイテムかもしれない。幸せならいい。

私は、今学生なら試験までテスト勉強だ。


試験期間になっても、フリップ王子様やレガシー王子様、クリスティーナ様は、来なかった。何かあったのだろうが生徒会メンバーも何も言わないので、関係ないのだろう。

ただ、バードに会えないのは寂しいけど。


そのまま冬季休暇に入った。

お母様とジョーセルが夏も領地に行けなかったので冬は、領地で過ごす事になった。

トルネス領は、夏は活気があったのに、今は元気がなかったが大きな町だから、すぐに元に戻るだろう。

その代わりマリノティス領は、冬だけど芋祭りだ。いつからこんな出店が出ているのか不思議だった。

「随分、賑やかね」

とお母様が言う通りだ。

領主館につけば、お父様、お祖父様、お祖母様が迎えてくれる。領主館の使用人もジョーセルに歓喜の声をあげている。可愛い、当たり前だ。

「随分出店など賑わっていました」

と言えば、お父様やお祖父様が頷き、

「芋の収穫高が凄くてな領民は、祭りだ。一籠の芋が二十倍になったよ」

と言った。そしてお父様は、

「北部の村、ルイーゼが壁を補強しただろう。あれが凄い役だったそうなんだ。悪いが、他の村の補強も頼めるかい?」

「もちろんです」

と言えば、お祖父様も

「芋の匂いに釣られて、猪が山からこっちまで降りて来て、北部は、猪祭りでもあって南部の村も協力して猪を追い払ってはいるんだが、体当たりが凄くて柵が壊れているよ」

と言った。

「出店は、猪肉もあったんですね。また行くのが楽しみになりました。燻製とか長期保存食は作らないのですか?後、補強、元カトロ領も大丈夫ですか?」

と言うと、お母様が、

「燻製?」

「燻製か。そうだな、冬を越す非常食にいいな。今まで狩猟はこちらの領はなかったから、あちらの方が、仕掛けが上手くてね。教わりながらやってるけど、補強出来たら頼みたいな、いいかい?冬季休暇潰れてしまうよ」

「大丈夫ですよ」

柔らかくする魔法が役に立つなんて、私こそ嬉しい。もし課金で手に入れていたなら、選んだ私、偉いと思った。

楽しい夕食を取り、部屋に行く。

「ふぅー、これでゲームは終わったのかな」

と独り言を言い、一人納得していた。



一方、デマルシア帝国


「何故、気付かなかった、側近はいただろう。とにかく、城の備蓄庫から全て食料を出せ」

「はい、わかりました。レガシー王子様」

「ナタリアのやつめ」


離宮にてナタリア王女は、

「何故、私の物をどんどん売るのですか、やめなさい。無礼ですよ」

と叫んだ。クリスティーナ王女は、

「やってくれたわね、お馬鹿さん、だから何番目かの側妃の子を当てにしちゃダメなのよ。純血な王族じゃない子を他国に行かせて、こんな失敗をするんだもの。せっかく私と兄様が、フリップ王子に恩を売ったのに元に戻るかもしれないじゃない。あなたは、どこかの金持ちに嫁ぎますから」

どう言えば、ナタリア王女は、真っ青になって、

「トルネス公爵がサインすれば、婚約の内約書だって」

「読まなかったお馬鹿さん。あれは、ガルバン共和国とデマルシア帝国は、困った時は、支援しますというサインをあなたはしたの。あちらは、軍備に力を注いで、内政をしなかった為、食糧難でデマルシアに支援がきたの。これが公になれば、トリノ王国への背任よ、同盟どころじゃなく戦争よ」

とクリスティーナ王女が怒鳴れば、ナタリア王女は

「ガルバンも戦争の準備をしているなら、デマルシア帝国と二国でトリノ王国を落とせばいいじゃない」

と言った。

「兄様の先見の明の力が戦争は、回避と言ってるのよ。あちらには魔法使いがいる、負けると言ったのよ。疑うの?純血の王族を」

と言って、騎士にナタリア王女を幽閉させた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る