第27話 疑い

お父様に話したら、レイラ様は、間違いなく悪役令嬢に仕立てられてる、とおっしゃった。

「しかし、こんな目立つ方法でやるんですか?」

と言えば、お父様は、

「証拠はない、証言だけだ。何となくだが、カトロ侯爵、マゼラン侯爵、ガルバン共和国、デマルシア帝国…駒が揃ったね。証拠が欲しいね、任せてルイーゼ調べるよ。他には何かあったかい」

と聞くお父様に、ボソっと、

「貸しを今返しているとフリップ王子様は、言いました」

と言えば、

「もしかして、フリップ王子様の周りに転生者、それもゲーム経験者がいるのかもしれないよ。それらしい人物はどう?」

「検討がつきません」

と言えば、お父様は、注意深く見たらわかるかもしれないよとアドバイスをくれて、私は、部屋から出た。


頭の中で、繰り返すのは、それって、私が受けるはずのヒロインからのイベントを代わりにレイラ様にスライドさせてるって事じゃないよね。最初ライラ様と会った時なんて言っていたっけ、思い出せない。

引け目を感じる。

廊下にお母様がいて、思わず抱きついてしまった。

「あらあら、ルイーゼったら。子供に戻ったみたいね。一体どうしたの?」

お母様を巻き込みたくないのに、私は、

「文化祭でレイラ様が、ライラ様に暴力を振るったとなって、私を庇ったかもしれなくて」

と文脈もなく言えば、お母様は、髪を撫でてくれて、

「ルイーゼ、レイラ様に聞いたの?庇ったって」

「いえ、それは違うんですけど」

とお母様を見る。するとお母様は、

「私だったら、間違っていると思ったら本人に言ってしまうわ。それが悪役令嬢って言われてもね。レイラ様もそうだったんじゃないの?ルイーゼは彼女が正しいって事を証明してあげたらいいじゃない?お父様みたいに」

とお母様は、優しく言ってくれた。

「はい」

転生者は、正すことが出来るということなのか。記憶があって出来ることはあるかもしれない。

まず、叩いたか見た人がいるか探してみよう。まずそこからだ。


今日は、文化祭の片付けに追われたが、午後になり、叩いたかどうかの証人探しが出来ないか生徒会メンバーに伝えた。みんなで探せば早いはず。サリバン様だけ下を向いていたけど。

ゲームを知ってる転生者かもしれないけど、生徒会メンバーの情報収集勝負だと意気込んで、まず現場に行き見える位置、校舎の二階の窓の6から8枚目あたり、同じく三階の窓だなとメモに書く。

クリスティーナ様が、

「何しているの?」

とハスキーな声で聞く。

「文化祭当日、ここで女子生徒のトラブルがありました。出来るだけ目撃情報を集めたいのです」

「何のために?」

とまた聞く。

「それは、生徒会のメンバーが疑われたら、動きますよ。そんなことやらない先輩だって私達知ってるんですもの」

と言えば、

「じゃあ、ライラ様は、Aクラスの仲間じゃない?」

と言われた。確かにそうだけど…。

「ルイーゼ様は、片方が嘘をついて悪い事をしてるって思ってるわけですか?」

「そんなつもりではなくて、事実を知れば誤解も解けるかなと思ってる」

と何故か私がクリスティーナ様に追い詰められてるような気がする。クリスティーナ様は、

「誤解ね」

と言って、三階の窓を指した。

「私が図書室から出て戻る時、確かに女生徒の争う声は聞いたけど歩いていて見てないわ。窓にいたのは、同じ転入生の三年生の黒髪の人。ずっと見ていたかは、わからない。お役に立てたかしら?」

「ありがとうございます。クリスティーナ様」

と一礼した。


生徒会のメンバーにもこの情報を伝えて、後日、ガルバン共和国の伯爵令息のティルス様を生徒会に来てもらい話を聞くことになった。

私、クリスティーナ様の言葉が引っかかった。確かに、ライラ様が悪いと私決めてないかしら、実は何かがある可能性は?もう一度、証言の紙を見た。


ライラ様がレイラ様をサリバン様の事で煽って言い争いになって、平手打ちの音がして、二人は倒れた。何故レイラ様まで倒れるのかしら?

側にいたメンバーに聞いた。

「何故レイラ様も倒れたのかしら?レイラ様に聞いてみたいわ」

と言えば、フリップ王子様が答えた。側にいたのあなたかい。

「確かに叩いた方が倒れるって変だな」

と言えば、

「すいません、普通に聞いてしまって」

と言えば、フリップ王子様は、少し真面目な顔で

「マークとキースが国外追放になる」

「えっ、それは、罪がどうなんですか?マゼラン侯爵と一緒?」

「マゼラン侯爵達は、間違いなくガルバン共和国に逃げた。そしてマークとキースは、ガルバン共和国に行くとみて間違いない。手引きがこの国でもいる」

「普通に考えて山狩りをしたカトロ侯爵様ですか?」

真っ直ぐに私を見るフリップ王子様。

「もう一人、ガルバン共和国と取引をしているマリノティス伯爵。二人もガルバンの人間が密入国していた。助けた体裁で王宮に侵入させたと考えられないかい?」

「何を言っているか、わかりかねますが、我が父は、取引はしていますが、手引きなどする人ではありません」

こいつ、何言っているんだ。

「それは、何の根拠があって?関わっているのは同じ、もしかして、私を君が助けたから?」

とフリップ王子は言った。

「は、何言っているんですか?そんなつもりないですし、私の父はそんな企てをしたりしません」

まさか、お父様が疑われているなんて。

何故、調べているから?

「どうして私の父が疑われるようになったのかしら?」

と聞けば、

「情報で判断すればカトロ侯爵とマリノティス伯爵それほど違いはないと言われたからさ」

「だから、誰にですか?」

「国王とトルネス公爵宰相だよ」

「えっ?」

どうして、そんな上の方の人達が言うのか。

ただの意見の出し合い?

「フリップ王子様、昨日、お父様は私の話を聞いて調べると言っていました。どうしてその矢先にこんな事態に、それも急にまるで情報が漏れているみたいに。…私、我が家に戻ります」

と言えば、フリップ王子は、何か考えているようで私の話を聞いてなかった。


慌て家に帰ってみると、お父様はいなかった。

王宮に呼び出されたそうで、帰ってこない。流石にお母様も心配になり、王宮に使いを出したが、逆に我が家には騎士団が来て、外に出ること禁止、外部と接触禁止、執務室も内政官が来て調べている。

お母様は、ショックを受けて倒れてしまった。


お父様が証拠を見つけると言い出した矢先だ。

あの時お父様は、カトロ侯爵、マゼラン侯爵、ガルバン共和国、デマルシア帝国…と言った。それとフリップ王子の近くに転生者がいる、注意深くみればわかるかもしれないと言っていた。


何か見逃している?

情報が漏れているなら家の中?

不安と疑いが混ざる中で気ばかりが焦った。

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