第25話 ゲームのシナリオ
この一週間、ライラ様は、クッキー屋をやる仲間達と楽しく盛り上がっている。Aクラスとか関係ない。学年で一つの催しをやるので、各クラスに顔見知りがいる。きっと私より友人がいそうだ。
元平民ということで、身分も気にしない、明るく元気がいい、そんな印象だ。フリップ王子様ともサリバン様とも仲良く話している。
「凄い、あっという間に学園に馴染んでいるわ」
と呟くと、転入生のクリスティーナ様が後ろに立たれて
「私とは大違いですね。こちら落としたのは、ルイーゼ様ですか?」
と本に挟んでいたバードの羽が落ちてしまったようだ。
「クリスティーナ様、ありがとうございます。大事な羽だったので助かります」
と言うと、目は見えないが、口元が上がった気がした。
「そう」
と一言言って去る。クリスティーナ様を見て、誰かに似てる?と感じた。
そのまま、昼食、休憩だけど、ほぼ毎日こちらで食事兼会議をしている。ぼっち飯ではないが本を読む時間がない。そんな時に生徒会に、生徒が入ってきた。
「大変です、レイラ様が言い争ってます」
と駆け込み、メンバーみんなで部屋外に出た。少し先の廊下から声が響く。
「侯爵令嬢なのですから、矜持とか令嬢としての振る舞いをした方が良いと申しているのです」
とレイラ様。
「私だって、努力してます。頑張って皆様についていこうとしているんです。それなのに、身分ばかりが先行して、ついていけないのです」
と下向きで言っているのはライラ様?
「今のは努力している方の行動とはとても思えません。しかも」
とレイラ様の声を遮り
「レイラ嬢、待ってくれ。ライラ嬢も転入したばかりで空回ることもあるだろうが、同じクラスの仲間として頑張って馴染もうとしている。言い方が、注意の仕方と言うべきか最高学年の先輩としてどうなんだろうか。もう少し寛大な心で対応してくれるとクラスの仲間として嬉しいのだけど」
とフリップ王子が言った。
レイラ様は、下を向きそして向き直って、
「わかりました。今後注意の仕方を気をつけます」
と言って、一礼をして行ってしまう。
この一幕だけを見るとレイラ様が悪役令嬢でライラ様がヒロイン。
ゲームの1シーン。
解散し始めた野次馬で集まっていた生徒に、生徒会のメンバーに見えない位置で聞いてみた。
「レイラ様が悪いんですか?」
と、すると、
「あの令嬢が廊下を走っていたところを、レイラ様が注意されて、令嬢が急いでいただけ、用事があってとか言って、レイラ様が更に注意をしたら、泣き出しそうになってフリップ王子様が来たって感じかなぁ」
と教えてくれた。やはりレイラ様は悪くない。悪いように切り取られてるだけ。
「ありがとうございます。わかりました」
と御礼を言えば、レガシー王子様がいて、
「何かわかった?」
と聞かれた。一礼して、
「レイラ様は、廊下を走っていたあの令嬢を注意されただけのようです」
と言った。全く関係ないけど、本当に美しい顔立ちだと思う。近くで見ると余計に、背はあまり高い方ではないみたいだ、レイラ様と並べば甲乙つけがたい美人だなぁと思った。
そして野次馬から去っていく中に黒髪が揺れた。
生徒会室では、食事の続きだがレイラ様は来ない。サリバン様もフリップ王子様も無言。空気が重い。今日は、決めることもなく解散した。
久しぶりの昼休みに図書室で、何か本を借りようと選んでいるとクリスティーナ様に会った。
軽く会釈して、本を選んでいると、鳥を連れた主人公の冒険譚があり借りることにした。
「ルイーゼ様は、男性が読まれるような本が好みなのですか?」
と聞かれた。冒険譚だからか?
「面白そうなものに男女は関係無いのではないでしょうか?」
意外にクリスティーナ様って古風。チラッと見たら、葡萄酒の歴史を読まれていて、それもどうかな?と思った。
「あぁ、この本?国に帰ったら挑戦してみたいと思って」
とハスキーな声で言われると色気を感じた。
「私も鳥を飼ってみたくて」
と言ったら、少しおかしそうに笑った。目が見えないからわからないが、クリスティーナ様も相当美人だと思う。会釈して図書室を去ると、またレイラ様とサリバン様に遭遇。これで二回目。
今度は、逃げないで、廊下を通る。
一礼して通り過ぎる。すると、サリバン様から
「待ってルイーゼ嬢。君は、さっきのどう思った?フリップ王子が変だったよな?」
と言われた。
「サリバン様、変だと思われたなら正してあげれば良いのではないですか?友達なら尚更です」
と言ってクラスに戻った。余計なことは言わない。自分で判断するべきだ。
これがゲームの話し通りなら中々無理矢理感があるのだなぁと感じた。前回の仮面パーティーもだし。
お父様に伝えると、
「本当にそうなんだよな。自称ヒロインは王子の前で転んだり、悪役令嬢の前で転んだり。そんな転ぶ令嬢いるか?と言いたくなるよな」
「お父様はどうやって終結させたんですか?」
と聞くと、
「まず、サラサは学園を休んで、その間に焦れた自称ヒロイン達が王子に近づき、学園が騒がしくなり、前の王妃が今の王妃、元公爵令嬢を独断で婚約者に内定した。公爵令嬢の一派が、自称ヒロインを領地送りにした」
「いやいや、そんな突然婚約者って決まるんですか?」
と言うと、お父様は、頭を掻きながら、
「うちの父と今の王妃の公爵家の公爵様は、仲が良いんだ。引退した今も行き来している。父には逐一報告していたんだ。今のルイーゼみたいに。それで王子が心配になって、公爵様が動いたんだと思う」
「では、私もレイラ様は、フリップ王子が好きでサリバン様は、レイラ様が好きなようで、フリップ王子はわからない。ライラ様はフリップ王子狙いかなって感じです。お父様上手く動いて下さい」
と言うと、
「まだ色々ありすぎて動けないよ」
と苦笑いした。
夜の空に面倒くさいぞって言いたい気持ちを我慢した。
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