第21話【相性/ステラside】

「あははははっ! 『重力増幅デディグラビティ・十倍』!」

「おわっ!? 『重力軽減テディグラビティ・十倍』!」

「『毒素惨殺トキシニス』」

闇魔砲ディアングル

「くらえ! 『闇魔切断ディアルブレイブ』!」

「『雷電乱舞』」

「「「『帯電防御サンダーガード』っ!」」」


 創造神を異次元に飛ばしたことを皮切りに、聖愛大戦が始まった。私たちは若干神々に翻弄されているようにも思えるが、決して負けているわけでは無かった。


 各神々に対する情報量と、それに対応できる技術量。冒険者たちの日々の研鑽や努力がここで発揮されていた。


「いい感じだよ! 攻撃は私たちリーダーに任せて! 『多重起動・発光弓矢ライトアロー!』」


 声掛けをしつつ、生誕神アルティーユに向けて矢を放つ。アルティーユに迫る三本の矢。それはギラギラとした光を放ち、とても眩しい矢と化していた。


 リリーさんによると、生誕神の弱点は光らしい。それが光属性のことを指すのか、それとも科学的な光のことを指すのかは不明だが、まずはそれを確認しなければならない。


 アルティーユがさっと顔を隠した。


「っ……! 『漆黒よ、生誕しなさい』……!」

「っ! 当たりだ……!」


 どうやらアルティーユの弱点とは、後者のことを指していたらしい。その証に、生誕神に少々の焦りが伺えた。

 アルティーユは生誕神の権能で漆黒を生み出し、光を何処かへ吹き飛ばした。矢を避けた後に、ため息を一つ。


「……貴方たちの中に、神々に詳しい者がいるようですね。……不覚でした」


 アルティーユは悔やむようにこちらを見て、魔法陣を二つ構築した。


「貴方たちに知れ渡ってしまったその情報……一体どなたから仕入れたのでしょう?」


 一つの魔法陣に光が集う。それは一点に集中し槍の形を形成した。もう一つの魔法陣は四つに分かれ、五大神の元に飛んでいく。


「とても気になるところです。教えてくださいませんか? 『神聖光槍ホーリースピア』」

「っ! 『閃光弓矢フラッシュアロー二連トゥワイス』!」

「『漆黒よ、生誕しなさい』!」

「させないっ! 『強奪弓矢ドレインアロー』!」

「『更に』!」

「『貫通矢ライズアロー』!!」


 生誕神に対する勝機を見出し、私は攻撃への転換に成功した。先刻までの状況とは違い、アルティーユは防戦一方の戦いを強いられている。


 段々と攻撃に勢いが出て、動作に余裕が生まれてくる。


「くっ…………。ディアル、代わってください!」

「ん? ……そうだな。こちらも相性が悪いと感じていたところだっ、『炎熱火球メテオフレア』!」


 アルティーユがお互いの相性を冷静に判断し、対戦相手の変更を試みた。やはり、破壊神だけでなく他の神々も相性が悪いと感じているらしく、やりづらそうに戦っている。


 「互いの相性」それがこの戦況を左右する最大の鍵なのだ。


 もちろん、私はそれを止めにかかる。


「『一点集中・貫通弓矢ライズアロー』! 対戦相手の変更なんて、させないよ!」

「『雷雲よ……」

「『一点集中・無重力フライティ』! ……邪魔はさせないからね、ステラ・ルーカス!!」

「っ!」


 私の技を無力化したのは、協調性の協の字も無さそうなデディケイト。幼く、あまり深く考えていなさそうな彼だが、戦況はわかっているようだ。

 彼の技は繊細さには欠けているも、私たちの邪魔をするには充分だった。


 ローザさんも対戦相手変更の阻止に加わる。


「『隕石流星メテオシャワー』! ステラさんっ、攻撃の隙を与えないで!」

「はい! 『追跡射撃ストーキングショット』!」

「『次元幽閉』……俺も加勢する」


 暗殺者第一位の冒険者ダリルさんも加わり、アルティーユとディアルの対戦相手変更は九割という高確率で失敗に終わる状況まで来た。手数も火力も充分だ。 


 が……


「何なんだよ! 一気に団結しちゃってさ!!?」

「どうやら、対戦相手変更はさせて貰えないようですね」

「チッ……。だがこのままでは分が悪いな……」


 デディケイト、アルティーユ、ディアルは対戦相手の変更ができないことを感じ取ったらしい。背中合わせになり、お互いの不足分をカバーし合う陣形をとった。

 互いに背中を預け合い、五大神は同時に叫んだ。


「任せた! 『多重起動・闇魔砲ディアングル』!」「任せます。『散弾・光槍ライトスピア』」「頼んだよ! 『重力混沌カオスグラビティ』!」


 私たち冒険者が団結したように、五大神も団結していく。お互いに変化していく戦場では、成長速度が速い者だけが……生き残る。


《開戦から約一時間半》

死者:十七名

重症者:ゼロ

戦況:やや優勢



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