青い女きつねの最強剣士と赤のハイ・エルフ

第1話

「あんたがあたしに勝てるだなんて一兆万年早いんだよ！」

　ゴブリンを処理したあとに出てきた熊。そいつの右ナックルを華麗に避ける。

　避けるために体をひねった。その状態からの切り上げ。

　熊の右手が肘から切り飛ぶ。

「グアァ」

　熊が恐怖の声を上げる。

「あとは……そこだ」

　突（とつ）

　その剣が鋭い光を放って熊の眉間に突き刺さる。

　深く脳を刺されたクマはその場で息絶えた。

「あたしに勝つなら３メートルくらいの大きさになるんだね」

　――――――――

「なるんだね……ぐへぐへぐへ……」

「何になるんだかねえ。ボタン、そろそろ起きないと薬草取得のノルマが達成できなくなるよっ」

「ひゃ。ひゃあ。　今のはひゅめ……。ああ女将さん今から仕度しゅまひゅからっ」

｜サカキ・ボタン（あたし）は、そこら辺で死にそうだったところをこの村に拾ってもらって労働をしている物体。

　あたしまっしろな毛をもったきつね族。

　しっぽと耳がこれでもかっていうくらいでっかいのが魅力。

　背も高いね。肌も白いか。服は着流し一枚に草履、頭は邪魔にならない程度に縛ってる。

　顔や胸腰のでかさ？　エッチヘンタイチカン！

　労働といってもこの村の特産品である薬草の元になる草を収集するだけだけどね！

　薬草も調合品なんだねー。あたしも調合できるよ。

　ちょっと森の奥によく生えているので、あたいみたいな武士、騎士、まあそういう奴らの崩れもの、つまり冒険者がやるのが適してる。

　そこに加えてあたしは武器があるからね、武器が！

「はーい女将さん、本日は５０草の収穫でしたー。ボーナスください」

　スッと左手を差し出す。

「「無いよそんなもん！　確かに５０あるね、５０ユロルの支払いだよ」

「えー今回は「冒険者通信網」の依頼なんですから少し高くー」

「ほらさっさと愛剣ちゃんでも磨いてな！」

「しょんぼり」

　きつねのしっぽをたらしながら部屋に戻ります。

　そして愛用の剣「軍刀・花草水月（かそうすいげつ）」をせっせと手入れするのでした。

　　花草水月ちゃんはインテリジェンスソードで、知恵がある剣なんだよね。

　それこそクマとでも戦えるような大きさ。軍刀にしては大振りだねえ。

『モンスター相手に普通の打刀や両手剣は使い物にならん。一撃で殺せないと反撃が来る』

　両手持ちだから護拳はないけどね。刀の四角い部分の鍔（つば）はついていて、丸い形でちょっと大きめ。

『モンスターの使う武器や牙から守るためだな。デカいのが主流だから鍔もデカい』

　ほかにもいろいろ軍刀とは違う分はある。

　ま、花草水月ちゃんは私の素晴らしい助手だね、助手。

『結構主任をやっていることも多いと思うがな』

　ただ、脳内の喋りを読むのは止めて欲しいずら。

　そんなこんなでぼちぼちな生活を送っていたところ。

　女将さんの愛情だけはたっぷりな野菜くずとベーコンの入ったスープを食べているときにそれは起った。

「おい、みんな！　略奪集団だ！　略奪集団が来てるぞ！」