第2話 宇宙空間

 そこは宇宙空間だった。宇宙服に身を包ん

で船外作業をやっているのだ。宇宙船の外側

の部品を取り換えようとしている。それほど

難しい作業ではなかった。


 突然身体が飛ばされる。強烈な太陽風が来

てしまって母船の制御が効かなくなったよう

だ。その所為で宇宙船と繋がっている生命維

持コードが切れた。マズい、飛ばされた。


「助けてくれ、コードが切れた。」


 応答がない。船内は突然の太陽風でパニッ

クになっているのかも知れない。それにして

も私のコードが切れたことは警報が鳴ってい

るはずなのに誰も気が付かないのだろうか。

スーツのコードが切れたので空気はそうは持

たない。窒素ガスの小型推進装置もなぜか作

動しなかった。母船はどんどん遠ざかって行

く。戻る術はないのか。


「誰か、気づいてくれ、助けてくれ。」


 叫んでも叫んでも反応はなかった。


 母船から遠ざかり、方向で言うと地球に向

かっている。このままでは大気圏に突入して

しまう。大気圏に突入した途端、一瞬で灰に

なる。


 全く体の自由が利かない。前後左右、どち

らにも体を自由には向けられない。慣性の法

則に従ってくるくると回転しながら落ちてい

る。このままだと酸素が切れる前に大気圏に

突入しそうだ。死ぬときは一瞬か。回転しな

がらときおり見える地球が眩しくて目を開け

てはいられない。


(ガン)


 何かに当たった。デブリだ。天文学的な確

率だった。デブリに追突したのだ。何の破片

かは判らなかったが何かの金属片だった。マ

ズい。宇宙服に傷が付いた。酸素が抜けても。

一瞬だ。どちらにしても一瞬か。


(グサッ)


 右の腹あたりを何かが貫いた。まさか。さ

らに天文学的な確率で二度目のデブリだ。細

長いデブリが私の腹に刺さっていた。酸素が

抜ける。刺さっている金属片も致命傷のよう

だ。大気圏も近づいている。


 私は確実に死ぬのだろう。でも一体何が原

因で死ぬのだろうか。意識が遠のいて行く。

もう何も考えられなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る