【Ex】花街の敵

 え、話も聞いてくれないんですか! なんて非道で無骨で野暮なんでしょう! それじゃあ結婚もできないでしょう? 余計な世話だって顔に書いてありますけどねぇ、その歳で妻なし子なしって問題ありありですよ。

 弁明は受け付けませんから。何と言われようとごまかされようと! 結婚できていない事実は変わりません! はーん。相手にするのやーめよ、とか考えたでしょう。簡単にわかっちゃいますからねー。顔に出る性格って損ですねー。

 ま。それはさておき。私の話、もちろん聞いてくれますよね? お仕事ですもんね? 怠けるなんて税金泥棒もいいところ。しっかり入国税払ってるんで、働いてくださきね。

 なぁーんで、早く終わらないかな、て顔をするんですか、職務怠慢で申し立てますよ! 何処行ったってねぇ、愛嬌と度胸と口があれば何とかなるんですよ。

 ううん? 話、聞いてませんでしたね? かなぁり大切な話をしてたのに!

 きちんと聞いてくれますよね? 聞きますよね? 聞 き ま し ょ う ね!

 やっと聞く気になりましたか。ほら、やればできるでしょう。私、年長者だからって精霊でも遠慮しないんですからね。ダメなことはダメ! じゃないと、法律も罰則も意味ないじゃないですか。

 あ、精霊に通じるのかって思ったでしょう。わかりますわかります、私も思いました。

 今日もね、ゲンさんに、あ、私が一緒に旅している精霊です。カワウソ姿で、可愛いって騒がれるんですけど横暴で口が悪くて食い意地がはっているという人間じみた彼が言うわけですよ。酒は飲んでも飲まれるな、て。

 でもね、付き合いってあるじゃないですか。食堂の入口でニコッて笑われてお酒を味見してって言われたら飲んじゃうじゃないですか。それが美味しくて美味しくて奢ってくれるなんて言うから、ついついおかわりしちゃって。何か困ってることない? なんて訊かれるから話を――

あ、ゲンさんだー! 迎えに来てくれたのー?



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