異世界モンスターズ ~転生して吸血鬼になったけど案外幸せにやってます~

紅蓮士

第一章:不還の森の聖者様

PROLOGUE

インタビュー ウィズ 聖者様

「聖者様、このたびは我がウィークリーキングダム社の独占インタビューをお受けいただき恐悦……」


 ふはは、我が城にようこそ!


「!」


 なんちゃってな。これって【不還ふげんの森】独立百年記念のインタビューでしょ。うんうん、聞いてる聞いてる。あ、ごめん。ちょっとカッコつけてみたかっただけだからそんなビビらないでね。


 記者さんの自己紹介? シュテリアさんね。どーもどーも。


 ちなみに俺に悪意を持っていないかどうか先に【鑑定】で見てるから、どういう人なのかは知ってるんだけどね。


 ハーバルド侯爵御令嬢のシュテリアさんでしょ? え、家名は誰にも教えてない? あー、悪いね、勝手に盗み見て。


 しかしどうして侯爵のご令嬢が新聞社の記者に? 


「わ、私は三女でして。政略結婚で老人と結婚させられそうになりまして、それが嫌で家を出たのです。だから家名を名乗らずにこれまで生きてまいりました」


 すごいねぇ。そういう苦労人、嫌いじゃないよ。で、シュテリアさん。インタビューって何から話そうか?


「ま、まずは大変僭越ながら、聖者様のお名前とご種族を……」


 へ? 今更それ聞くの?


「じ、実は聖者様のお名前や種族、年齢、出生からこれまでの経緯など、誰も存じ上げません。私達が知るのは聖者様による勇者撲滅、隣国の壊滅、厄災の排除、それに数限りないお知恵の……」


 あー、待って待って。俺の名前が伝わってない? だから聖者って呼ばれてたのか。おっかしいなぁ。何回か名乗った気がするんだけど……。うちの連中は口が堅いし、あんまり街とも接触しないから仕方ないのか。


 とりあえず名前ね。


 南無なむ切葉セツハ。南無が家名でセツハが名前。


 こっちに来てから殆ど名前で呼ばれずに聖者様とか御館様って言われてるから、名乗るのが恥ずかしいんだけど。あ、こっちでは名前の順番が逆だよね。はは。


「し、失礼ながらどちらの国のご出身なのでしょうか」


 それなぁ。俺が時の話から始めないといけないんだけど、長くなるよ?


「それは問題ありませんが……」


 では本邦初公開! 実は俺、この世界とは違う世界からやってきましたー!


「?」


 うん。そういう顔をすると思ってた。チキュウとかニッポンとか、知らないでしょ?


「いえ、まったく……」


 だよねぇ。じゃあヴァンパイアって種族は知ってる?


「い、いえ。初めて聞きましたが、それが聖者様のご種族名なのでしょうか」


 元々は違うんだけど、うーん、やっぱり最初から話するかぁ。


「お許し頂けるのであれば何時間でも何日でも、私は聖者様のお話を伺い続けます!」


 お、おう。気合い入ってるね。おーいキサナ。こちらの記者さんにコーヒーをお出しして~。


「あ、あの今の家政婦メイドさんは、まさかとは思いますが、絶滅した銀人狼種シルバーワーウルフでは……」


 気にしない気にしない。最初の方からうちで働いてくれてる子だよ。


「先程私を案内してくださった執事の方、どこかで見た覚えがあるのですが、まさか行方不明になっている王国の勇者様なのでは……」


 さすが記者さんだねぇ。そうそう、あいつ勇者(笑)なんだよね。最初の頃は……あぁ、これも追々話をするよ。


「窓の外で庭木を手入れしているのは……、なんですか、あれ」


 うちの庭師だけど、どうかした?


「人間……じゃないですよね? あのような種族は見たことがないのですが」


 共通語が話せて意思疎通できるのが「人間」なんでしょ? そういう意味ではあいつも人間だけど。まぁ他所では魔人って言われてるみたいだね。


「魔人を召使いに? そんなお戯れを……。というか中庭のあの大きな木はどうして光ってるんですか?」


 あれはファルテイア様が植えてくれた世界樹ユグドラシル。綺麗だよねぇ。


「ファ―――そ、それはこの世を創世されたキラウヨルグ神の御名ですが……」


 ちょっとした知り合いなんだよね。俺がここに来た時に良くしてもらって。


「か、神と知り合い!? 聖者様は神の使徒であれるのですか!?」


 うわ、メモ書き超早い。まぁまぁ落ち着いて。その辺の経緯も話をするから。


 だけど俺が今からする話を新聞に乗せても、誰も信じないかもよ?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る