追悼25 寡黙が物語る

 蜷 川「十代の自殺の方法の多くは首つり、ODといった薬、飛び降りだ。凍死は

     違和感があるな。当時の旭川の最低気温は-20℃、軽油や日本酒が凍る

     環境下だ。そこで凍死を選ぶのは無理があるな」

 三 上「雪山の遭難時に裸で発見されるってのもあるわよ」

 財 津「なら、所持していたコーチのリュック、スマホ、MOZの長靴が何故、発

     見されていない。錯乱状態でばら撒いたとしてもそれを見つけられない

     程、警察はちゃらんぽらんじゃないだろう」

 三 上「隠蔽?」

 財 津「何らかの力が働いているか、捜査機密か、それはまだ分からないな」

 蜷 川「軽装でリュック、携帯を持って外に出た。現金はたいして持っていなかっ

     た。であるなら、直ぐに帰るか、匿って貰える確信があったと考えるのが

     妥当だな」

 財 津「極寒の中、軽装で家を出ていることから、すぐ近くまで迎えに来ていた車

     があったということだな」

 三 上「運転免許証所持者が関与しているってこと?だとすれば、桜子さんの知り

     合い、その仲間の中に18歳以上の関係者がいたことになるわね」

 財 津「常識的にはな。無免許で親の車を乗っている場合もあるからな」

 神宮寺「でも、他に調べたメールからも、いま、名前が上がってきている者たちじ

     ゃないよ。いれば、そいつと一緒に個室になる車を使った悪さや遊びのや

     り取りがあってもいいのに、まだ見つかってないからね」

 蜷 川「自分で言っておいて何だが、無免許で凍結した道路を運転できるのか?慣

     れる為には相当乗っていなければならないし、ルールを知らないんだから

     違反検挙から免れないだろう…それとも見逃されていた?」

 三 上「ゼロ…とは言えないけど、噂は聞いたことはないわ、道警では。でも、地

     元となれば村意識が罷り通るから…」

 財 津「罷り通るから警察上層部と地元の有力者の癒着で見逃しているってか」

 三 上「だから、私はここにいるのよ」

 財 津「だな」


 基本見守る立場の執事の綾小路が口を開いた。


 綾小路「補足と言うことで聞いてください」


 一同は、緊張の面持ち綾小路を中心に、各々のやり方で集中していた。


 財 津「やっとしゃべったぁ」

 綾小路「皆さんのお邪魔をしてはと思い謹んでおりました」

 財 津「ちょちょちょ、俺たち、仲間でしょ、綾小路さん。なっ、皆」


 一同は、笑顔で頷いた。


 綾小路「ありがとうございます」

 財 津「で、何を教えてくれるのかなぁ」

 綾小路「警察の動きです」

 財 津「おいおいおいおい、来たねぇ」

 綾小路「今回、皆さんにお願いした理由がここにあります」

 財 津「面白くなってきたねぇ」

 綾小路「警察の動きが可笑しいのです。それを皆さんにお知らせしようと」

 財 津「聞きたいねぇ」

 綾小路「では。警察による大掛かりな捜索は失踪からたった2日目で打ち切られ

     た。それも防犯ビデオなど一切、捜査せずに」

 蜷 川「結論ありき、ということですか?」

 綾小路「残念ですが。母・静江さんとの口論の果て、常軌を逸し、自殺した、とい

     うことで幕を引こうと」

 蜷 川「真実が明かされれば、警察、その関係者に都合が悪いということか?」

 綾小路「確信がある訳ではないですが、その可能性は十分にあるかと」

 財 津「綾小路さん、続きを」

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