第5話 ペンギンアイテム
逃げ去りながらも必死になって追って来るペンギンたち。
全力で走って距離を稼いだ為か、多少なりの余裕が出来ていた。
まあ、全力疾走なんて久しぶりなものだから、息が上がってしまって膝が笑っているが……俺は小休憩がてら後ろを振り向いて折角の『能力鑑定』を試してみる事にした。
ペンギンたちに向かって、適当に脳裏に能力鑑定と呟いてみる。
これでもしも発動しなければ、何か発動条件などと考慮しなければならないと考えていたが、案外脳裏に呟くだけで能力鑑定が発動した。
「……」
能力鑑定は一体のみを対象にしていた。
一番足が速くて接近を試みているペンギンに能力鑑定を使った所『推力加速』と『自爆破壊』の二つのスキルが視界の左端から出現する。
能力鑑定を使うとこの様な感じに表示されるのかと思う反面、相手のペンギンのスキルがまったくの同じである為に、俺が能力鑑定をした状態でスキル解放が出来るのかどうかが分からなくなってしまった。
やはり他のモンスターに視線を合わせてみた方が良いのだろうか。
例えば、ペンギン以外にも、他のエネミーにむけて能力鑑定をしてみるとか。
もう一度、俺は能力鑑定を使ってみた。
今度は一番足が遅くて、ヨチヨチと歩いているペンギンに対しての能力鑑定をしてみると。
そのペンギンには『推力加速』と『自爆破壊』の他に『人鳥の共鳴』と言うスキルを所持していた。
すると、俺のウインドウが開かれて『!』の表示マークが『スキル解放』の欄に表示されていた。
俺はすかさずその内容を確認する為にボタンを押していくと、スキル解放済みの欄には『人鳥の共鳴』と言うスキルが解放済みになっていた。
「俺の能力鑑定でもスキルが解放されるのか……」
これは良い情報だ。アルトリクスが敵エネミーの情報を開示する以外の方法でも、スキルを開放する事が出来る。
「ちなみに……このスキルはなんだ?」
『人鳥の共鳴』
・ペンギン系エネミーを呼び寄せるスキル。
・ランクが高ければペンギン系エネミーが仲間として認識する。
「結構強いなコレ……」
「プロフェッサー、何かあったのですか?」
アルトリクスが聞いて来る。
そう言えば、アルトリクスの【職能】ではないスキル欄にはまだ所持なしと言う項目があった筈。
「……アルトリクス、試しになんだが、お前のスキルを覚えさそうと思う」
「私のですか?どの様なスキルを覚えさせて下さるんですか?」
好奇心が高めなのか、わくわくとした表情でアルトリクスが聞いて来る。
「『人鳥の共鳴』と言うスキルなんだが」
「………ペンギン」
後ろを振り向いて、ヨチヨチと歩いて来るペンギンを見詰めるアルトリクス。
何か考えているのか視線を左上に向けて、表情を崩した。
「可愛いですね……」
思わずモフモフしてしまいそうに、両指を動かしていた。
「あ、あぁ……お前が嫌じゃなければ、早速習得させたいんだが……」
「私は構いません、プロフェッサーにお任せします」
そう言われた、俺は即断した。
全力で逃げているのに追い掛けて来る奴らはとてもしつこい、このまま逃げても追い掛け続けて来るだろう。
だから新たな一手を加える必要があった。
ウインドウから『スキル解放』を選択し、解放済みスキル一覧から『人鳥の共鳴』を選択すると、『このスキルを習得しますか?』と言う表示を確認して、はいの選択を押すと、ウインドウが目を細めるくらいの光を放ちだして、スキル習得済みの文字が現れる。
「これで習得したのか?」
俺は疑惑的だった、一応アルトリクスのステータスを表示させて中身を確認すると、ステータスの中には確かに『人鳥の共鳴』と言うスキルを習得している様子だった。
「アルトリクス、お前はスキルを習得した事になっているが、何か変化はあるか?」
「外格に対する変化は見られません……ですが、何故か一つ、力が宿ったと言う実感があります、使用しても宜しいですか?」
そう言われて俺は二つ返事で了承する。
アルトリクスは後ろを振り向くと、ペンギンたちに向けて手を前に翳した。
「集いなさい、我が同胞よ」
アルトリクスがそう口遊む。
すると、微かながら周囲の砂地が揺れ動いて、ぼこっ、と砂地の中からペンギンが顔を出した。
「わっ、ペンギン」
彼女を覆う様に出現したペンギンに目を輝かせるアルトリクス。
「こいつら全員
アルトリクスの近くにいると言うのに、ペンギンたちは爆破する様子を見せない。
それどころか、アルトリクスの足元に近寄って頬ずりすらしていた。
「可愛いですね、ペンギンさんたち……」
「悠長にしている場合じゃないぞ、アルトリクス」
こうしている間には、アルトリクスを狙ってペンギンたちが接近しているんだ。
「そいつらに命令とかできるか?突撃しろとか」
「ペンギンさんたちをですか?……えっと、突撃?」
そう告げると、アルトリクスの周囲に居たペンギンが、敵エネミーであるペンギンに向けて走り出した。
そして接触すると同時に自爆スキル『自爆破壊』が発動し、周囲に居たペンギンたちが爆破に飲み込まれて誘爆しつつあった。
「あぁ、ペンギンさんたち……」
アルトリクスが残念そうな顔を浮かべて、爆破していく様を眺めている。
俺は逆に安心した、少なくとも、ペンギンによる神風は途絶えた事になる。
「はぁ……凄い疲れたな……」
俺は息を吐いて地面に座った。
砂が汗に付着するが関係ない。
すると、爆破の後に何か物品が落ちていた。
アルトリクスがそれを報告して、一つのアイテムを俺に渡してくる。
「なんだコレ?……人鳥の嘴?」
ウインドウが開いて、素材を入手しました、と言う表記が出て来る。
どうやら、エネミーを倒した事で入手出来るアイテムであるらしい。
それと同時に、俺はウインドウに表示される『!』のマークを確認する。
それには、アルトリクスのステータスに何か変化があったらしい。
俺はそれを表示すると、『Levelが上昇しました。ポイントを割り振れます』と書かれていた。
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