第5話 一方その頃、暁の旅団は (1)
「かんぱーい!」
高級料理店を一店舗借し切っての前祝い。
暁の旅団のリーダー、ランドルフの音頭で乾杯が行われた。
「ローランド = サウス卿。この街の2大貴族の内の一つからの直々の依頼だ!」
冒険者パーティーはその単体での実力もさることながら、どこの貴族が後ろ盾になっているかでも扱いが全然かわる。
この依頼を成功させれば、暁の旅団はさらなる高みに上っていけるはずだった。
「依頼内容はなんだったけ、ランドルフ?」
「ああ、確かゴブリンの集団の討伐だ」
「ゴブリンか……まさか頭は、ゴブリンキングとかじゃないよな?」
「ああ、Bランク依頼だからな。頭はゴブリンジェネラルの依頼だ」
ゴブリンはEランクから始まり、ゴブリンキャプテン(隊長)がDランク、ゴブリンメイジ(魔術師)がCランク、そしてゴブリンジェネラル(将軍)がBランクとなる。
それ以上となると、Sランクの化け物のゴブリンキング(王)以上となり、今の暁の旅団では対処できない。
ゴブリンジェネラル(将軍)たちなら俺の剣と、エディの補助魔法。
カルカスの弓術による遠距離サポート、それにエリーの攻撃魔法があれば何も問題はないはずだ。
「にしても、まあ、いきなり運がむいてきたなぁ」
「やっぱあれだろ! パーティーからランスっていう疫病神がいなくなったからだろ!」
ぎゃーはっはっはっは!
メンバーが軽口を叩き大笑いする。
そんなメンバーたちの馬鹿騒ぎを横目にランドルフは。
(絶対にこのまま成り上がってやる!)
そう誓う。故郷の自分の両親、そして、兄を見返すためにも。
ランドルフの実家は、田舎貴族で位は高くはないが貴族階級であった。
最後までもめたが、父は結局、俺を認めず無能な兄を当主と決定してしまった。
このまま、成り上がっていけば自身の貴族階級を上げることも可能だ。
そしていつしか王族の専属冒険者となれば――
そうなればもう思いのままだ。
そうなったあかつきには実家の貴族は廃嫡にしてやる。
俺のような有能な人間を認めなかったむくいだ。
「いくら優秀であっても、おまえのような思いやりのかけらもないような人間に、当主は譲れん!」
「くそっ!」
ランドルフは、父に言われた言葉を反芻して悔しさがよみがる。
「どうした、ランドルフ?」
「いや、なんでもない」
ランドルフの様子を不審に思ったメンバーに聞かれるがとっさに取り繕う。
くそ! 何が思いやりだ! そんなものはなんの役にもたたない。
俺以外の人間は全て踏み台にすぎない。
こいつらも同様だ。今は利用できるから利用してやっているが、もし邪魔になるようでなれば……
「にしても、適無しなんて加入させてやってた俺らって神じゃね? それで徳を積んだから女神様がご褒美として、今回の依頼をくれたんだよ!」
「そうに違いねえ!」
ぎゃーはっはっはっは!
酔いが回ってきたメンバーは、だんだんと調子が出てきたようであった。
その酒宴は夜遅くになっても続いていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます