第11話 初撃


 ラフラさんからの勧めもあって、僕は一人でジャイアントオーク討伐のクエストを受けた。

 深界の森――中級クラスのモンスターがうようよいるダンジョンだ。


「うう……本当に僕なんかに倒せるのかな……」


 僕にとって、これが初めてのソロクエストとなる。

 いくらラフラさんやシロさんからのお墨付きがあっても、僕にはとてつもない挑戦だ。

 でも、これを乗り越えないと、あの人の隣には立てない――!


「うおおお!」


 僕は気を引き締めて、森の中を突っ走る。

 いつもシロさんといくダンジョンに比べたら、こんなところ、なんてことはない!

 そう思っていたのだが……。


 ――ドン!


「うわ……!」


 やみくもに走っていたせいで、なにかにぶつかってしまう。

 大きな……壁でもない……なにか毛の塊のような……?


「オーク……!?」


 僕がぶつかってしまったのは、ジャイアントオークの下位種族であるオークだった。

 だが、そのオークでさえも、僕は倒したことがない。


「グモオオオオ!」

「ひぃっ……!?」


 だめだ、こんなところでビビッていたら、ジャイアントオークなんてとてもじゃないけど倒せない。


「来るなら……、来い……!」


 僕は剣を構えた。


「グオオオ!!!!」


 オークは僕に向けて、力いっぱい攻撃をしてきた!

 しかし……。


 ――ヒュン!


「あれ……? 遅い……?」


 僕は簡単に、それを避けてしまう。

 まあたしかに、前から僕は攻撃を避けるのが得意だった。

 そうしないと、ヒールを回せないしね……。

 でも、それにしても……。


「オークの攻撃が……まるで止まって見える……!」


 僕は自分の成長を感じていた。

 今までは、あくまでヒールを回すために動き回っていただけだった。

 それは逃げの姿勢。

 だが、今の僕はシロさんとともに戦ったことで、間違いなく進歩している。

 ちゃんと相手の攻撃を見て、敵と向きあったうえでの回避。

 そこには明確な差があった。


「見える、見えるぞ……!」


 僕はいたって冷静に、攻撃を避け続ける。

 こうなれば、もう怖くなんかない。

 当たらないものを、怖がる必要なんてない……!


「今度はこっちから、反撃だ……!」


 僕は、剣を抜いて、オークにつき刺した。

 相手が攻撃をしてきたところに、必ず隙ができる。

 攻撃をかわせさえすれば、その隙を突くことも簡単だ。


「グモオオオ!!!?」


 オークの腕から、ドバっと血が吹きだす。

 怯んだところに、僕は追い打ちをかける。


 ――ズバ……!

 ――ズバ……!


「グモオオオオオオオオオオ!!!!」


 ――バタ……!


 オークの巨体が、地面に倒れた。


「やった……!」


 ついに、僕一人でオークを倒すことができた……!


「これもシロさんのおかげだ……! 本当にすごい……!」


 彼女は、僕の才能を見抜いて、剣を持たせてくれた。

 ガイアたちのパーティーにいたら、一生こんなことはできなかったかもしれない。


「ようし、この調子で、ジャイアントオークも倒すぞ……!」


 僕はさらに森の奥へむかった。

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