第5話 伸びたカップ麺

把握されている限りでは恐らく始まりは世田谷区某所、奇妙な蒸発事件が起きた。

何日か連絡が取れない同僚のアパートの一室に様子を見に行くとそこにはだれもおらず伸びに伸びたカップ麺だけがテーブルの上に残されていたというのだ。特に部屋に事件の痕跡などもなかったという。カップ麺を食べようとお湯を入れてから急にいなくなるというのは少し不自然なため、特にオカルトマニア達の間で噂される事件となった。

そしてその後似たような事件が日本各地で起こるようになる。

洗脳や、連続誘拐、挙げ句の果てには宇宙人によるアブダクションなど様々な説が持ち上がっているが警察も何も掴めず、失踪した人達は今も見つかっていない。そして俺は今カップ麺を作っている。

何故カップ麺を残して急に人が消えるのか。

仮に連続誘拐事件だとしたら残されたカップ麺は犯人からの何かしらのメッセージだろうか。

ただ同一人物による犯行だと知らせたいだけならカップ麺を残すよりはもっとスマートな方法はありそうなものだが。

もしくはカップ麺を作ることでスイッチが入るような洗脳にかけられているのだろうか。

そんな洗脳をかける意味もわからないし、そのまま失踪した人達が見つからないままなのも謎だ。

それとも食べていたカップ麺に何か秘密があったとしたら。

報道ではカップ麺の銘柄までは発表されていないが、ネットでは毎回置かれているカップ麺がいつも同じわけではないという情報を見た気がする。

というか食べたものでそんなに行動まで操れるものなのだろうか。

碌な仮説も出ないな、とふと気付いたら俺の目の前のカップ麺はすっかり伸びきっていた。

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