06.引きこもりに外出はきつい件

 目を覚ました時、今までのことが夢じゃないと悟り、恒例のチベットスナギツネ顔を晒した僕だったけれど、今までと当然違うことが起きた。


「おはよう、告死天使様」


 そう言って、ガチムチの筋肉だるまこと、スオウさんが僕のところへやってきて頭を撫でた。なんというかとてもこそばゆい。


「おはようございます、スオウさん。えっと……」


 何故来たかわからないけれど、すごく優しい笑顔でまた頭を撫でている。よしよしって感じ。シオン王子みたいなちょっとヤバイ感じはないので安心してそのままにしている。


「心配するな。俺はどんな事があってもあんたを守る」


「ありがとうございます、あの、そういえば僕は、どうすればよいのでしょうか……」


 元々ネット弁慶の死神やっかいなニートである僕に何か仕事とか任されてもできる気が全くしないが、それについてはここにいる限り確認が必要だろう。


 すると、スオウさんは少し考えてから、


「そうだな、買い物に街でもいくか??この世界のことあんまりわからねぇってしんどいだろう??」


 といった。買い物って外に行くってことでござるか??それは死神やっかいなニートにとって難易度ルナティック過ぎて死ぬし無理。


「いえ、そのあまり外には……」


「……どうした、顔色すごいわりぃな。心配するな、どんなことがあっても俺が守るからさ」


 そう言って豪快に笑う姿はとても素晴らしい。これがもし女騎士だったら完全に恋愛フラグだけどスオウさんは狂戦士。うん、そうはうまくいかないよね。


「えっと……」


「スオウ、勝手にクイル様を連れて行くのはダメだ。クイル様、お食事の支度ができました」


 そう言ってシオン王子がやってきた、王子なのになんで死神やっかいなニートの世話をしているのだろうか。


(常識的に考えて王子様って普通はこういうことしないよな)


「クイル様、確かに私は王子だが、神殿に所属するものだ。だから神聖なる告死天使であるあなたの側に居たいと直訴したんだ」


 まるで心を読んだように、全く考えた読めない笑顔を浮かべるシオン王子。色々怖いが考えないようにする。この手のタイプはあまり考えても答えが出ないって、好きな小説で言っていた。


「そうですか……あの、僕はこの国で何をすればよいですかね……まさか人を殺せとはいいませんよね……」


「殺すか、良い言葉だ。この国には死ぬという概念がないから殺すという概念もなかった。けれど、スオウが死を与えられたので死ぬという概念が生まれたが、つまりここで私が、スオウをなんらかの方法で死に至らしめれば殺したとなるわけですね。中々不思議だ」


 感慨深げにいうシオン王子。確かに死のない国では、という概念もないのは至極当たり前のことだと今更気付いた。

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