月灯 ─akari─

鳴海路加(なるみるか)

夕実①

──どうやら、恋をしている、らしい


 縁側で、棒付きのソーダ味のアイスを食べながら夜空を見上げて、鹿屋夕実かのやゆうみは思った。

 空を見上げることが好きな夕実は、よく空を見ながら考え事をする。それは朝でも昼でも夜でも関係なく。

 よく空を見上げてはいるけれども、夕実は雲の様子を見て天気予報ができるわけでもないし、夜空の星を見て星座がわかるわけでもない。

 けれど、ただ空を見ていると落ち着いて、考え事をして頭の中の整理ができるのだ。


 今は夏休み。ぼんやりと去年からのことを思い出して、ふと思った。

 "どうやら"、"らしい"、と、他人事のようなのは、まだ確信が持てていないから。


 夕実は恋がよくわからない。

 "好き"と思うことはあるし、これまでも誰かに対してそういった感情を持ったことはあったけれど、それが恋だとは思えなかったし、思わないようにしていた。

 それは、あの日の出来事があったから…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る