第10話 『ねくすと・すてーじ!』

「…なんなんだよ、これ」

 出口が驚きと怯えを混ぜながら言う。

 平達三人がいつも通り他陣営を探していると、中学校を通りかかった。

 窓から学生達が徘徊してるのが見える。

 ─異様な点があった。

 一つは、学生達は常に辺りを見回しながら距離を取って徘徊していること。

 誰も談笑したりはしていなかった。

 もう一つは、脚や首に接合部が見えることである。

「大量人形、意味不明。」

「契術かなんかじゃねぇの?好都合じゃねぇか。ちょっくらボコって…」

「だ、ダメだ…!」

「─何か見えたのか、出口?」

「成功確率を見た─13%。」

「いくら何でも低すぎる…何かウラがあるな?」

「…名案提出。」

 稲葉が二人に策を伝える。

「じゃあそうすっか。その場合は何%だ?」

「38%」

「十分だ」








「ねぇマモン、少しいいかな…」

 合理が買い物袋を持ち歩きながら、マモンを呼び出して尋ねる。

「えぇ、何でしょうか。」

「人って…死んだらどうなるの?」

「基本的には輪廻の輪に還りますね。」

「輪廻転生って…ホントなんだね。あと基本的にって?」

「合理様のような魔王の魂は…死んでから契約した悪魔のものになります。その後どうなるかは悪魔次第ですね。」

(…考えたくないな。)

 交差点で尾行がないかを確認する。

 一回目の確認で、目のような生物は追い払っておいた。

 ─目も誰もいない。

 ガチャッ

「ただいま…」

 無事誰にもつけられず見つからず買い物できたことを喜びながら、家の鍵を開ける。

「おかえりだぞ合理殿!」

 彼を迎えた男の名は音無量碁。

 近くの大学の学生だ。

「くぅ〜、やはりフェルマーの最終定理は何度見ても美しいですな〜!最近ようやく根本から理解できるようになってから余計美しいですぞ〜!」

「おかえり…、ハーゲンダッツある?」

「か、買ってきたよ…」

 買い物袋を前に置くと、渋谷は真っ先にアイスを取り出して食べる。

「あっ…、晩御飯まだ…」

「いっぱい食べれるから大丈夫…」

 ピリリリリリリリ

 そう話していると、合理の携帯に電話がかかって来る。

 番号は─平のものだった。

「もしもし、どうしたの?」

「おいーっす!早速だけどさぁ、明日9時方妙第二中学校の前に集合な!」

「え、えぇ?どういうこと?」

「まぁ事情を話すわ。中学校の中に大量の人形がいた…しかも制服を着てた。頭のいいお前さんなら、どういうことかわかるだろ?」

「に、人形!?しかもそれって…」

「学生達が、人形に変えられてるってことだろ?こいつは見過ごせねぇよなぁ?」

「なら見過ごせない…けど。」

「あ?」

「…けど、君の性格上義憤心だけで危険を犯しに行くとは思えない。」

「なんだよ、勘がいいじゃねぇか。でもまぁ考えてみろよ、あの能力が他人を人形にするものだと仮定するぜ。そしたら日数が経てば経つほどアイツが有利になるだけなんじゃねぇのか?」

「わかった。じゃぁ、みんなに話してくる。」

「あいよー」

 プープー

 電話が、切れた。

「…みんな、少しいいかな。」

「うむ、言ってくれ!」

「わうぃ?」

 音無は合理の方を向き、渋谷はアイスを食べながら返事をする。

 その後、合理は二人に事情を説明した。

「で、どう思う?みんなが反対するならやめるけど…」

「他人の尊厳を壊すような真似を…許せん!私は行くぞ!」

「話を聞くと平はしっかりとした戦略的観点を持っている人物と見た。故に友好関係を保つ価値はある…それに、の脅威もある。平が嘘を吐くメリットも見当たらない。」

「わかった─あ、ご飯作ってくるね。」

 合理は、厨房に下がっていった。






 ─2日目が終わり、約束の時が来た。

「約束護ってくれてありがとうな!さぁて、この6人でダンジョンを攻略する訳だが…。索敵できる奴はいるか?ウチはあんまし宛にならない。」

「こっちにもいないよ。」

「…なら作戦は一つ。この学校には北門と東門と正門がある。人海戦術を防ぐために、3班にわかれて突破する。」

「じゃぁ言っとくが、出口はサポート型の契術だ。」

「音無くんと僕はどちらかと言うとサポート型かな?この3人は分散させた方がいいよね?」

「なら正門は合理と稲葉、東門は音無と俺、北門は渋谷と出口でいいか?」

「それで問題ない。」

「よし、じゃあ各自解散ってことで!」








「うー、暇ッスよ!まーだ出撃しないンスか?」

 アスタロトは米沢にぼやいている。

「最低でも4日目までは動かねぇ。各自契術の鍛錬をしてもらう事にしている。」

「いやそれは堅実でいいと思うンスけど…正直つまんないンスよねぇ…」

「まぁに気づかなかったら俺は仲間引き連れて今頃暴れ回っていただろうなぁ。」

「あれって?」

「ハッキリ言うが…アスタロトお前、何か隠してないか?」

 アスタロトの目つきが変わる。

「へぇー…何を隠してると思うンスか?」

「訓練して気づいたことがある─契術や加護は使えば使うほど強化されるということだなぁ。そして使うにつれて…何か自分の体に異変が起きている感覚があるぜぇ。」

「─それで?」

「ここからは完全に俺の推測だが…





 契術には何か先があるのではないか?」

「御名答」

 米沢は少し驚いたような表情を見せる。

「驚いたなぁ。てっきりはぐらかされると思ったが。」

「隠しても乱流ちゃんはいずれ真実に辿り着くッスからね。その先は内緒っすよ?自分の目で確かめてくれって奴ッス。」

「ゲームの攻略本みたいだなぁ…、まぁいいさぁ。俺は勝つ。その先とやらを楽しみにしておくが…もし俺に破滅をもたらすつもりなら、乗り越えてみせるとだけ。」

「いやぁ、本当にエンジョイ勢なんッスね」

「当たり前だろ。こんなに楽しいことはないね。」

 そう言うと米沢はトレーニングに戻る。

(アッハハ…!乱流ちゃんはやっぱり面白いッスねぇ…。君がどうなるか、ちゃぁんと見届けてあげるッス。)

 アスタロトは、頬を赤らめる。

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