第2話 面接

 WideHitは大して大きいプロダクションでもなかった。歌手や俳優など、ほんの3~4人抱えているだけの事務所に、5人のアイドルグループが誕生し、ここ2年ほどで急成長したのだった。

 コンタクトを取ると、すぐに面接になった。ただし、オンライン面接だった。

「私が社長の広田です。えー、履歴書を見させていただきました。元々は文具メーカーの営業職をなさっていたそうですね。どうしてメイキャップの道へ?」

「はい。話せば長くなるのですが。まず、就職活動では散々面接で落ちまくっていました。そこで、軽くメイクをして面接に臨んだら、合格したのです。それがその文具メーカーだったのです。それから3年勤めたのですが、どうも、営業に行く先々で、相手のメイクばかり気になってしまって。それで、思い切ってメイクの道へ進もうと、専門学校に進んだのです。」

「なるほど。しかし、なぜいきなり面接にメイクをして行こうと考えたのですか?」

「それは、私の顔が暗いのかなとか、地味なのかなと考えたからです。就活雑誌の表紙などに、面接受けするメイク、なんていう文字が並んでいて、女性はそうやってメイクを武器に使っているのだから、男性だって同じようにしたらどうかと考えたのです。」

「それで合格したのだから、上手くメイク出来たんでしょうね。」

広田社長はそう言って笑った。ちょっと馬鹿にされているのかな、と思った。

「はい。私には才能があったので。」

と、言ってやった。

 面接が上手く行ったかどうかはともかく、俺は採用された。書類がメールで送られてきて、給与欄を見てぶったまげた。桁が一つ違う。

「1ヶ月100万?10万の間違いじゃないのか?」

そんなに儲かってるのか?あそこは。

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