第五回・漢詩のルールを把握せよ②

 第五回です。

 前回は一句を構成する『詩句』の並びについて説明しました。


 では、今回は『平仄式』について解説します。

 韻を踏んでいきますよ!


 まず、第一回で中国語としての漢字の読み方には『四声』という発声法があることを話しました。

 平・上・去・入の四声ですね。


 ただ、漢詩を作るときにはもっと簡単にして良いのです。

 それが、『平韻』と『仄韻』です。

『平声』が『平韻』。その他の『上去入声』が『仄韻』です。簡単!


 そして、詩全体において、この『平仄』の二種の音韻を配置する場所に一定のルールがあるわけです。これを『平仄式』といいます。


 では先の『涼州詩』をもう一度見てみましょう


 葡萄美酒夜行杯

 欲飲琵琶馬上催

 酔臥沙上君莫笑

 古来征戦幾人回


 この二十八文字に『平仄』を充ててみます。

『平韻』を〇

『仄韻』を●

 で表します。

 

 葡萄〇〇美酒●●夜行杯●〇〇


 欲飲●●琵琶〇〇馬上催●●〇


 酔臥●●沙上〇〇君莫笑〇●●


 古来●〇征戦〇●幾人回●〇〇


 もう何がなんだかわかりませんね。


 この場合、とりあえず大事なルールは四つです。


 ①二四不同

 二文字目と四文字目は違うのにしてね。


 ②二六同

 二文字目と六文字目は同じにしてね。


 ③一三五不論

 一、三、五文字目はどっちでもいいよ。


 ④押韻

 一、二、四句の末字は同じ平韻で揃えてね。三句目は外すこと。


 そしてやっちゃいけないタブーが四つ。


 ⑤孤平

 四字目が平韻だったら、その前後を仄韻で挟まないでね。


 ⑥下三連

 五、六、七字を同じにしちゃダメよ。


 ⑦同字排出

 同じ字を別の句で使わないでね。同じ句内ならいいよ。


 ⑧冒韻

 韻を踏むなら、それに使った韻の字は別のところで使わないでね。




 さあ!

 どうですか!

 私が味わった苦労が徐々に見えてきたでしょう!

 これ、全部気にして作らなきゃいけないんですよ!


 『涼州詩』の一二四句の末字を見ると、『杯』『催』『回』となってますが、これを漢和辞典で引くと、全て『灰』の平声となっています。

 他の平韻としては、

『庚』――軽、鳴、正、晴など

『東』――風、通、同、窮など

『真』――人、新、貧、塵など

 その他にもたくさんあります。同と窮が同じ韻とか分からなくないですか?(笑)



 ちなみに、上記の八のルールは七言絶句のものですが、一句目の二字を『平韻』で作ったものを『平起式七言絶句』、『仄韻』なら『仄起式七言絶句』といいます。なんかカッコよくないです?

 領域展開・仄起式七言絶句!

 なんちゃって。


 一応、平仄それぞれの七言絶句をきちんと図示した記号表があるのですが、それはまた後で紹介します。

 また、五言絶句や律詩にはそれぞれまた違ったルールがありまして、それは流石に割愛します。気になる方は(絶対いないと思いますけど)各自調べてみてください。

 そして当然、私が作りかけた五言詩擬きは何一つ韻を踏んでません。もう忘れてもらって大丈夫です。


 

 というわけで漢詩のルールその②

 平仄式に則って韻を踏め! でした。


 次からいよいよ実践編です!

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