第6話 借金 5080万8305ゴル

(もしかしてこれが【予知者】の能力なのか?

 だとしたら、全然役に立たないじゃないか!

 予知できても、金も力もない奴は結局踏み躙られて終わりなんだ!)


「でも…。」


ニクラスは父との約束を思い出した。


『どんなことがあっても自分を強く持て。

 自分に負けるな。』


(…そうだ。

 僕は父さんと母さんの分まで生きるんだ。)


思い直して再び考え始めるニクラス。


(もっと何かヒントはないかな…。

 せめて襲われる日時が分かれば…!)


ニクラスは夢の内容を詳しく思い返した。


(襲われたのは…、採集の時だ。

 今までは報酬を受け取った後だったのに、森の中で襲われた。

 …でも、いつなのかはわからないな…。

 それじゃいつまでも採集に行けなくなる。


 あとは…、『試し切りだ!』って言ってた。

 そして腕を…、切り落とされたんだ。

 その後は…)


腕を切られた時のショックが大きかったため、その後が鮮明に思い出せない。


(思い出せ…!

 思い出さなきゃ死んでしまう…!


 斬られたあと…。

 

 …そうだ。

 何かを話していた。

 


 『めちゃくちゃいい切れ味だぜ!

  街の近くでこんないい武器拾えるなんてラッキーだぜ!』


 『死体から奪ったんでしょ〜?

  悪いやつ〜。』


 『かわいそうだが、死んだら使えねえ。

  俺が有効活用した方が死んだやつも喜ぶだろ!』


 『ギルドに報告もしてないくせに〜。』


 『死体を見つけたら報告の義務があります、ってか!

  剣を奪ったのがバレたら面倒だろ!

  まあ、あんな目立つ場所ならすぐに誰か見つけるさ。』


 『水でも飲もうとしてたのかね?

  こんないい武器持ってるのに負けるなんてな。』


 『かわいそうにね〜。

  まあ、剣を拾ったばっかりのバルドゥルに見つかったこの子もかわいそうだけど〜。』)



意識を集中すると、腕を切り落とされた後の会話を鮮明に思い出すことができた。


(剣は…、剣はどんな形だった…?)


さらに意識を研ぎ澄まし、夢の記憶を探る。


「…!!

 ”旋風刃” だ!!」


思い出したニクラスは思わず大声を出してしまった。


アイテムマニアのニクラスはほとんどのアイテムの情報を覚えている。


(Bランクの剣じゃないか!!

 そんな剣を使う人が死んでたなんて、何があったんだ!?)


「…よし。」


夢の内容をより詳しく思い出せたニクラスは、回避する方法を考えた。




次の日、ニクラスは両親と暮らしていた貧民街の外れの焼け爛れた住処へ戻っていた。


「これを…、使うね。」


そして、教会へ行き “あるアイテム” を購入。


(この身体の具合からして、僕は明日は採集に行く判断をする。

 今日から例の場所で張り込むぞ。)


その日の夕方、ニクラスは街の近くの湖へ向かった。


バルドゥルたちが夢で話していた


『街の近く』

『水でも飲もうとしていた』


というキーワードを当てはめると、その湖しか思い当たらない。


湖に着いたニクラスはモンスターに見つからないよう、大きな木に空いた ”うろ” に身を隠した。


(まだ来てないな。

 ”旋風刃” を持った人が来たら間違いない…。)


ニクラスの取った手段は、『”旋風刃” を持った冒険者を助けること』。


バルドゥルが “旋風刃” を拾わなかったら、腕を切り落とされることはない。


そして、1人の冒険者の命を救えるかも、そう思ったのだ。



しかし、まだ傷が完治していないニクラスは体力も回復しておらず、うろの中で眠気に襲われ、いつの間にか寝てしまっていた。




「ぐあああああ!!」


突然、うろの外から叫び声が聞こえた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る