4 お笑いのあれ、何だっけ





「もうおしまいだ。


何もかも。


もう無理だ。


僕にはもうっ!」



「死ぬんすかぁー?」


「へっ?」


「しかし何でこう皆さん高いとっから落ちたがるんかね。」


「なっ...なんすかっ!」


「あ、俺 死神のガク。お前の魂預かりにきた。」


「しにっ...死神っ....。」


「そっ。ほら、こんな翼生えた人間がいるか?」


「翼...デカ。」


「うん、重い。じゃなくてさ、お前こっから落ちたら魂もらっていー?」


「あ....うん...いーすけど...。」


「あら、あっさり。あんがとっ。じゃ、中断して悪かったな、はい、どうぞー。」


「あっ...はいっ。」


「............。」


「............。」


「どうぞー。」


「.............。」


「.............。」


「.............。」


「........落ちねーのかーい。って、かーい。てあるよね かーいってお笑いのあれ何だっけ。」


「あ...あの...。」


「ん。」


「つき落としてもらえません?」


「......馬鹿か。俺が突き落としたら自殺になんねーだろーが。

俺は自殺したやつの魂が欲しいのよ。」


「いや...そこをなんとか...。」


「なんだそれ。いや、落ちろよ。」


「嫌ですよ怖いもん。」


「............。」


「...........。」


「死ぬ気ある?君。」


「はい!死にたいです!」


「おぉぅ...決して死にてーテンションじゃねーな。」


「いえ!死にたいです!」


「そうか、元気でなによりだ、死ぬのに。うん、あのー...あれだ、違うのにしたらいんじゃねーか。」


「例えばなんすか...。」


「んー、首吊り?」


「嫌ですよっ苦しいじゃないすか。」


「.....んー、じゃあリストカット。」


「めっちゃ血出るじゃないすか痛いし。」


「....じゃあ溺死。」


「苦しいじゃないすか。」


「薬大量に飲む。」


「苦しいです。」


「うん、もっかい確認だが死にたいのか?」


「はいっ!死にたいですっ!」


「よし、馬鹿だなコイツ。」


「馬鹿じゃないです!」


「うん.....んーと、うん、わか、分かった、うん、じゃあこうしよう。」



────パチンっ



「.....っここは....線路....?」


「うん。線路。」


「めっちゃ縛られてます。」


「うん、縛った。もうすぐ電車来るからよ、大人しく寝とけ。」


「えっ。」


「電車に轢かれりゃ痛いもクソもねぇよ即死できっから。ラクだろ?」


「あぁ...まぁ、はい、そっか。」


「ま、逃げたきゃ転がって逃げろよ。俺は手出さねーから。」


「はっ、はいっ!」


「ん。じゃ、電車来るまで待っとけ。」


「はいっ。」


「..............。」


「..............。」


「...............。」


「.......あ....の....ガクさん....。」


「ん。」


「なんか....振動が....。」


「うん。電車来てっからな。」


「音も....してきました....。」


「うん。電車来てっからな。」


「ひか....轢かれます...。」


「うん。電車来てっからな。」


「あ.....いや.....めっちゃ....迫ってる...せまっ....迫ってますガクさんっ!」


「知ってる。」


「いや....まっ...待って、待って待って待って待って来てますぅぅぅううううーーーー!っ!!助けてーーーーーーーーーーー!!」



─────パチンっ



「はっ!!.....ここは...さっきの屋上...。」


「はぁ.....。

佐久間 晃。お前は彼女にフラれて自暴自棄になり死を強く望んだため死神である俺がきた。

でもな、お前に死ぬ資格なんかねーよ。」


「っ!ガクさんまでっ...そんなことくらいで、なんて言うつもりですか!」


「言ってねーだろ話聞けバカ。お前の人生は後70年以上ある。お前が彼女にフラれてピーピー泣き喚いてるこの期間なんて人生の一瞬でしかねんだよ。

この一瞬の為にお前は残りの70年無駄にすんのか。」


「っ...!ガクさんにはそんな程度の事に聞こえるかもしれませんけどっ、僕には死活問題です!彼女がいないなんてっ何のために生きてるのかっ....もう分かんないんすよ!」


「あーっそ、晃、地上を歩いてるあのOL風なあの女、どう見える?」


「は...はぁっ...?な...なんか...清々しそうなキャリアウーマン的な?さぞリア充なんでしょうねっ!」


「あの女は中学まで施設で育ってる。」


「っ!」


「生まれた時から施設暮らしだ。預けた親は最後まで迎えに来ることは無かった。

それでも仕事を見つけてあの女は今自分の力で必死に生きてる。

明日も明後日も一生を懸命に生きてくんだ。

それからあっちの男はどう見える?」


「.....サラリーマン....。」


「あれは3年前に嫁を事故で亡くしてる。あの男の目の前でな。しかも新婚だ。それでもそれを乗り越えてこの3年間前だけを向いて生きてきた。

嫁を忘れたわけじゃねぇ。嫁との思い出はさぞ重かっただろうよ。それでもその重い十字架背負って明日も生きてくんだ。

それがあの男の選んだ生き様だ。

晃、てめーだけ不幸だとか思ってんじゃねーぞ。」


「..........。」


「何のために生きてんのかなんて、人生を全うしたヤツにしか分かんねぇ。

その命が尽きる時に初めて知るんだよ。

お前は存在理由が判明するくらいまだ生きてねぇんだ。

そんなペーペーが死ぬ死ぬほざいてんじゃねーよ。」


「..........。」


「お前の選択肢は1つだ。明日も部屋で泣き喚け。泣いて泣いて馬鹿みたいに泣き尽くせ。

もう一滴も出なくなったらまた学校行け。

元気なんか後から自動的に付いてくる。

とにかく必死に生きろ、馬鹿。」


「ぅっ....うっぅぅっ....。」


「.......って、何で死神がこんなこと言わなきゃなんねんだよアホか。

ほら、さっさと帰ってメシ食って寝ろっ。」


「ぅっ...ぐすっ...はぃぃぃっ....。」



「んぁぁぁあっ....つっかれた....。

(ま、あの男女の話は俺の即興ストーリーだけどな。)」




人間にはどうしようもない苦の瞬間がある。

金銭での失敗。

男女関係のモツレ。

自分以外の人間を傷つけた時、また殺した時。



それが自ら命を絶つ死へと発展してゆくなら、是非協力してやってほしい。

死神屋さんのガクさんに。

アナタの力で生を受ける魂たちに。



TO BE CONTINUED…


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