第20話 お友達誕生

短くて申し訳ありません。

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 さて、犬型ゴーレムはふさふさの毛を身にまとっているけど、瞳だけが無機質なままだ。僕はそこへオパールに魔力を込めながらはめ込んでいく。両目とも完成すると離れる。パチクリとゴーレムが瞬きをすると、オパールが虹色に輝く。よし、外観はこれで大丈夫。あとは、ゴーレムの内部に動くための魔力を生み出す疑似心臓を創り出す。念のために3つ。


 そして、最後は知識を与える。さあ、これでどうだ。


“生み出していただきありがとうございます。創造主よ。”


 頭の中に響く声にメイナード君達は驚いている。言葉に魔力を込めることによって相手に伝える事ができる魔法だ。確か、論文には書いていたはずだけど、一般的ではないのかな。取り敢えずは説明を。


「メイナード様、ゴーレムが完成いたしました。先程の声はこのゴーレムから発せられたものです。驚いたでしょう?」


「はい。オーギュスト卿は慣れておいでですね。」


「まあ、これは伝える者を絞ることができるので秘密話に丁度良いのですよ。勿論、このゴーレムをそれができます。ところで、名を与えてやっては戴けないでしょうか?」


「僕が名付けてもよいのですか!?」


「勿論ですとも。」


「では、“カニウス”と。」


「承知しました。今からお前は“カニウス”だ。そして、こちらのメイナード・ドナラグネ様がご主人となる。」


“承知しました、創造主。メイナード様、名付けていただきありがとうございます。”


「そんなに固い言葉を使わないでほしいな。僕は友達のようなペットが欲しかったんだ。」


“わかった。・・・これでどうだろうか?メイナード。”


「うん、それでいいよ。」


 メイナード君がカニウスに抱き着く。フワフワの毛の感触を楽しんでいるようだね。ただ、カニウスの魅力というか能力はそんなモノだけじゃないけどね。


「ミッド卿かアシュロイ卿、カニウスを剣で斬りつけてくれ。大丈夫、防衛用の結界が展開される。メイナード様はそのままで。」


「ミッド、やってみて。」


「メイナード様のご命令ならば。」


 そう言ってミッド殿が斬撃をカニウスに向かって放つ。けれども、カニウスから50cmほどのところで弾かれてしまう。


「凄いですな。」


「まあ、伊達に学院を首席で卒業していないよ。この結界はメイナード様がいる場合はカニウスを中心に半径10mをカバーする。また、10m以内に入って、カニウスかメイナード様に危害を加えようとしても今のように50cmほどのところで作用する。さらに言えば、カニウスのそばにいるメイナード様の手を握り、魔法を使って加害しようとしても魔法は発動できないようになっている。毒物も無効化される。なので毒見はいらなくなる。他にも防衛用の仕組みを組み込んだ。」


 そう言うと、ミッド殿とアシュロイ殿はビックリしたように大口を開けていた。メイナード様も目を丸くしている。やれやれといったような表情をしているのはカトリナ嬢だ。


「もちろん、攻撃能力も優れている。近衛騎士並みの戦力として数えていい。魔法も私と一緒で全属性を満遍なく使える。魔力を生み出す疑似心臓を3つ体内に創っておいたので魔力切れの心配はない。」


「・・・我々、護衛騎士の立場が危うくなりますな。」


「何を言う。アシュロイ卿、諸君らは王家の剣であり盾であろう?そんな弱音を吐くな。それにカニウスはメイナード様の友達だ。諸君らとは立場が違う。」


「確かにそうですな。いや、お恥ずかしいところをお見せしました。」


「気にするな。」


 言いながらミッド殿とアシュロイ殿の肩をポンポンと優しく叩く。さて、カニウスがいる時には防御が完璧でもいないときにそれがなされなければ意味がない。ということで、創造魔法で、防衛用の魔法を仕込んだペンダントと指輪をメイナード様にプレゼントする。


「カニウスに加えて、こんなものまで戴いてしまってよろしいのでしょうか?」


「ええ、肌身離さず使ってください。私の中でメイナード様は友の立ち位置にいますから。おっと、これは不敬でしたね。お許しを。」


「そんなことないです。オーギュスト卿、是非とも僕の友人となってください。」


 あら、いいのかな?カトリナ嬢を見ると頷いているのでいいのだろう。


「では、友の証としてこの冊子をお渡ししましょう。これはついとなる冊子を私が持っておりまして、例えばメイナード様が“今日はこんなことがあった”と書きますと、私の持っているモノにもそれが時間差なく記載されていきます。まあ、文通をより便利に早くしたものだと思って頂ければ。」


「えーっと、僕の記憶が確かならこのような魔道具は国宝級だと思うのですが・・・。」


 言いながらメイナード様はミッド殿とアシュロイ殿を見る。2人とも首を超高速で振っている。面白いね。


「友人だからよいのですよ、メイナード様。」


 僕はそう言って笑いながらメイナード君の頭を撫でるのだった。夜会ももう終わるね。

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