第3話 何故ここで出逢う?


 




 入学式した初々しい生徒達が学園生活にも少し慣れた頃。

 この日は、学校帰りにマリアンヌとユリベラの3人で寄り道を決行した。


 貴族の通学の基本は馬車なので、今日はユリベラの家の馬車で皇都の街までお出掛け。


 念願のスィーツカフェで、紅茶を飲みながらショコラケーキを堪能した。

 ユリベラは林檎のタルトで、マリアンヌはクレープ。


 夕方は学園の生徒達でいっぱいの店内の隅っこの席で、3人は甘いおやつを堪能する。

 先生の話や学園生活の話で楽しいお喋りが止まらない。



「 お嬢さん達~ ジラルド学園の1年生だよね? これからもご贔屓にね~ 」

 初来店の記念にと、クッキーを持って来てくれたのは店長だ。


 学園の制服は濃紺のブレザーと膝下まであるフレアースカートの制服。

 ブレザーの襟とスカートの裾には白いラインが入っていて、首もとの棒タイは各学年毎に色分けされている。

 だから学園の1年生と直ぐに分かってしまう。


 いや、何処の学校も真新しい制服に、思春期に入ったばかりのまだあどけない1年生は一目で分かるのだが。


 因みに棒タイの色は、1年生は赤で黄色が2年生、緑色が3年生で紫色が4年生となっている。



「 あっそうだ! 来週は野苺のタルトが新発売だから宜しくね~ またオマケしちゃうから是非来てね~ 」

 ベージュのベレー帽に揃いのベージュで、襟元に赤いチェックの可愛い制服を着たイケメンのシェフがウィンクした。


 キャアっと頬を赤く染めた乙女達は可愛らしい。

 若干、20歳の精神的オババの私もキャアっと頬を染める。

 今は14歳の乙女なのだから当然だ。



 キャアキャアと言いながら店を出て、あの美味しくて評判の唐揚げ店の行列に駄目元で並んでみた。


 人気のある店だから……

 お一人様に付き1個しか売ってはくれないと言う。

 しかしその1個がかなり大きいのが嬉しい所で。



「 はぁい!お嬢ちゃん達はジラルド学園の1年生だね。じゃあ、入学祝いに1個オマケしちゃいまーす 」

 棒タイの色をチラリと見た店主がニコニコと笑って。


「きゃあ~有り難うございまーす」

 店主は3人にオマケの唐揚げを1個ずつ袋に入れてくれた。


 やったあ!!ラッキー。

 唐揚げもう1個ゲットだぜ!


 寄り道デビューはご機嫌だ。

 1個は近くにある皇都公園の噴水広場のベンチで3人で腰掛けてモグモグ。


 買い食いなんて貴族令嬢としては如何なものかと思うが。

 それは学生の間での事だと大人達からは容認されていて。

 なので……

 皇都の商店街の夕方は何時も沢山の学生達で溢れているのだ。



「 何これ?!美味しい~ 」

 初めて食べた噂の店の唐揚げは、評判屋以上に美味しかった。


 今朝兄と、この唐揚げ屋さんの話が話題になった事から、これは是非とも兄にも食べさせたい。


 私はオマケで貰った唐揚げを兄へのお土産にすることにした。

 唐揚げ1個が大きいので、マリアンヌとユリベラは2個も食べられないと言っていて。


 私は……

 本当はまだまだ食べられますが。

 そこは淑女らしくわたくしもですわとオホホと笑って。



 ユリベラの家の馬車で公爵邸の門をくぐり、正面玄関まで送って貰って。

 サヨナラの挨拶をして、スキップをしながら家に入って行く。



「 お嬢様お帰りなさいませ 」

 公爵家の家の者達が挨拶をする。


 何故か皆があたふたとしているのには気付いていたが。


 兎に角、早くお兄様に美味しい唐揚げを食べさせたい。

 もう、鼻歌まで出ちゃうわ。



「 お兄様!!お兄様!! 」

「 今朝、話していた唐揚げをゲット出来ましたわ! 」


 コンコンと兄の部屋をのドアノックしながら部屋に突入した。

 一応ノックはしたわよ。


「 さあ、お熱い内にお食べになって! ほら!あ~ん! 」

 袋から出して兄の口元に唐揚げを兄に押し付けた。



「 ……… 」

「 ……… 」


「 ? 」

「 ? 」


 2人は暫く見つめ合っていた。

 一瞬時が止まった様だった。



 兄がパクっと唐揚げを頬張った。

「 うん!美味しい 」


 誰?

 私の手からパクって食った兄では無いこいつは誰なの?



 見上げる程の背の高い人物。

 ブロンドの髪にアイスブルーの美しい瞳のシルフィード帝国の皇太子殿下がそこに居た。



 で……殿下!?


 まさかの皇太子殿下。

 それもいきなりの至近距離。


 キラキラとした美しいアイスブルーの瞳の中に私が映っている程で。



 そして……

 彼は口元に押し付けられた唐揚げを食べたのだ。


 食べたわ、食べたわ、食べたわーっっっ!

 唐揚げを食べたわーっっっ!

 私の手からパクって食べた。


 もはやパニック。



「おい!? レティ!お前!アルに何を食わしたんよ!?」

 部屋の奥から出て来た兄が慌てている。


 因みに家族からは……

 私はと言う愛称で呼ばれていて。



「お兄様!!!ちょっとこちらに 」

 私は兄の腕を掴んで奥の部屋に引っ張って行った。


 何故?

 何で皇太子殿下が我が家に居るの?


 だいたい私の今までの人生に兄は存在したのかしら?

 3度の人生では……

 兄とはあまり仲良くはなかったので。


 兄が皇太子殿下と親友だと言う事は知ってはいたが。

 勿論家になんか来た事は無い。

 だから……

 それ程の友達だとは思ってはいなかった。


 学園で一緒にいる所はよく見ていたが。

 ただのお付きだと思っていて。

 兄は宰相の息子なのだからと。


 まさか我が家に皇子様が遊びに来るなんて。



 気が付くと……

 兄の胸元を締め上げ、ガクガクと揺さぶっていた。


「 こら! レティ……止めろ! く……苦しい 」


 ふと横を見ると……

 クックッと殿下が口を押さえて笑いを堪えていて。


「 君がラウルの妹だね。初めましてだったかな? ラウルの友人のアルベルトだ。あっ!もレティと呼んでも良いよね? 」

 ゲラゲラと腹を抱えながらその美しい顔で話しかけられた。



 我が家に……

 あれ程までに恋い焦がれた皇太子殿下がそこにいたのだった。





───



書き換えました。






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