第4話


後日、白井から僕にLINEが来た。

彼女は、またいつもの明るさで「黒川くん、元気してる?」という言葉と、絵文字をふんだんに使って学校関連の連絡をしてきた。絵文字は適度に使うと分かりやすいが、彼女の文章は絵文字を使い過ぎて、もはや象形文字で会話しているような気さえした。

『ここからが本題です! 明日また行く時に、これを聞くから考えておいてね!』

彼女は、僕と交わした「助ける」ことをしっかりと覚えているらしかった。僕は後ろに続く文章を読んだ。



『①明日私と会った時に、やりたいことを一つ言えるようにすること。』

『②私と会う時は、弱弱しくしないで、人間らしくすること(前を向くために)。』

『③このLINEに返信する時、明日食べたいものを教えること。』



僕は、その文章を読んだ後、とりあえず思いついた食べ物をLINEで送った。なんとなく、今はダックワーズが食べたい。変にマニアックな依頼をしてしまった気がしたが、それしか思いつかなかったのでしょうがない。②に関しても、問題はない。別に彼女の前で素の自分を出せると言っても、女子の前でメソメソ泣くような男にはならない。

「…問題は、①だ。」

多分、普通に生きている人は、何かしら希望を持っている。「何が食べたい」だの、「何をしたい」だの、考えれば考える程沸いてくるに違いない。でも、僕は違う。僕は特技も趣味もないし、交友関係も程よく関わり、程よく距離を取っていた。誰かに会いたいということもない。


「…とりあえず、「本が読みたい」とか送るか? いやいや、それはつまらない。ゲームがしたいとか言ってみるか? でも、ゲームは元々してこなかったからできないわ。」



…この後、僕は結局一時間程悩んでいたが、ブツブツ独り言を連ねても何も思いつかなかった。とりあえず、明日思いついたことを言おうと決めた。

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