第35話

 なんだかんだと長旅でぐったりしたけれど、ようやく王宮に辿り着いたわ!


「トレニア、只今戻りました!」


私はすぐに薬師棟へ報告に向かったの。ファーム薬師長や他の皆も勢揃いで出迎えてくれた。


「お土産も沢山買ってきましたよ。このブランデーとコロンはファーム薬師長とロイ薬師と、ヤーズ薬師にです。あと、こっちの樽はあとの皆さんで仕事終わりに一杯出来るように地エールを買ってきました!」


地エールにみんなは興奮している様子。気に入ってもらえたようで良かったわ。


「あと、カイロニア国で近年発見されたサロニア国には無い薬草を株分けして貰ってきました。うちからも2種ガーランド領しか生えていない植物を送る事にはなっているんですけどね」


私がそう言うと、みんなの動作がピタッと止まり、一同の視線が私に向かっている。何か駄目な事をしちゃったのかしら??


えっと、だって、向こうの薬師さんが気軽な感じで株分けしてくれたし。


違法、じゃないよね?私はドキドキしながらファーム薬師長を見つめ返す。


「トレニア薬師、よくやった!入手困難な薬草をよく手に入れてくれた。これで新薬開発にも新たな道が開けそうだ。褒美を用意しよう。欲しい物はあるかな?」


「うーん。特には考えていなかったのですが、3日ばかり休暇を頂きたいです。流石に長旅で疲れました」


ファーム薬師長はにっこりと微笑んでOKをくれた。それと同時に他の薬師達からチーンと聴こえてきそうな音と共に遠い目をしていたわ。


「そうだ、トレニア薬師。せっかく休みを取るんだったら1日は一緒に出かけないか?サーロン植物園で珍しい植物が入ったらしいんだ」


「本当ですか。ターナ薬師、行ってみたいです」


「えー俺も行きたい。ターナ連れて行ってよ」 


「そんな暇ないですよね?みんな一気に休めないよレコルト薬師」


「えー。残念」


私とターナ薬師は残念がるレコルト薬師を横目に植物園の話をし始める。


「じゃあ、2日後の朝、迎えに行くから準備しておいてくれ」


「分かりました」


 私は植物園に行く事を楽しみに仕事を終えて帰宅した。他の薬師は私が土産に持って帰ってきたエールを仕事帰りに一杯飲んで帰ると言っていたわ。あの喜び具合だとすぐにエールは無くなりそうね。


「ローサ、ただいま。ローサも疲れたでしょう?ちゃんと休んだ?私は明日から3日間の休暇をもぎ取ってきたわ!」


「お嬢様お疲れ様でした。私はしっかり休ませて頂きましたよ。明日からはどうされるのですか?」


「明日はお父様にお土産を渡しに行って領地の薬草をカイロニアに送って貰うようにお願いする予定よ。2日目はターナ薬師と植物園に行ってくる。3日目は家でゴロゴロ予定よ」


「分かりました。明日のために侯爵家に先触れを出しておきますね」


そうして私は疲れもあって早めの就寝となった。

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