閑話8 NG Scene「シュークリームを食べながら」


「ねぇ、空」

「姉ちゃん、なに?」

「なんで、ゴム持ってるの?」

「……」


 ぶほっ。危うくシュークリームを吹き出すトコだったよ。いきなり何てこと聞くの、雪姫さん?


「黙秘権を行使する!」

「……空君?」


「つ、翼。違うからね。これは彩翔が、一線を越えそうになった時、間違いがあったらいけないからって。お守り代わりって言うからさ。でも間違いなんて起こるわけないじゃんね。俺、そんな相手いないのに」


「「「……」」」


「湊も『姉ちゃん達が、一線を越えそうになった時、そう言ってあげて』って」


「「「……」」」


「でも変だよね。コレとそれって結びつかないと思うんだけどな」


 と取り出したのは、青空を彷彿させる水色のシュシュだった。空君以外、唖然としている。空君、君はからかわれているから。さすが貴島さんの弟だよ、としみじみ思う。


 最近思うが、やっぱり空君は雪姫の弟なんだなぁって思う。妙に純粋で、ここぞという時に何故か天然だ。


「はい、翼」

「え?」

「一応、どうせ買うならって。翼に似合うものを選んだからさ」

「え? あ、その? え、あ、――ありがとう」

「うん、どういたしまして」

「……どうかな?」

「うん、見立て通り。似合ってる」

「……」


 真っ赤になった天音さんを見やりながら、俺は雪姫と顔を見合わせて――二人同時に苦笑がこぼれた。




________________


Q:空君はゴムを持ってたの?

A:空君自身は持ってません。彩翔君に言われたことを真に受けてました。イマイチ繋がっていないようです。天然ってイヤですね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る