第2話

「ねぇー、あれ自分用?」

首を振る。圧が凄いからじゃないけど。

「一緒に泊まりに来てたあの親父さん……ってとこかな?」

「……うん」

当たり前かもしれないけどバレた。

「お使いでも未成年はお酒を買っちゃダメ」

知ってるよ。知ってるけど。

「すいませんでした」

頭を下げて部屋を出た。


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スリッパを脱ぎながら「ただいま」と声をかけた。

「遅かったな。……酒は?」

びくっと体が震える。

「あー……ごめん、旅館の人に見つかりそうになって」

「は?」舌打ちが続いた。

「俺さ仕事で疲れてんだよ。お前は俺に着いて来てのんびりしてるだけなんだろうけどさ。こっちは一日働いてんの。」

「はい……」

「深夜になったら誰もいなくなるだろうから、絶対買ってこい」

「……はい」


その後続いた沈黙に耐えきれなくなって、俺は静かに部屋を出た。

特にすることもないので、もう一度温泉に浸かって時間を潰そうか。

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