第16話 お前か! まさかアドライアのとこにいたなんてよ

 アドライアから場所を聞いた俺は、ドミニアに合流したパイロットたちの顔ぶれを見る。


「ほほぉ……」


 どいつもこいつも、場慣れしてそうなツラだぜ。いきなりドミニアの戦力になった俺とは違う。

 ま、俺が勝つイメージしか見えねぇがな。


「ゼル君?」

「お?」


 と、聞きなれた声がした。間違いねぇ。


「やっぱりゼル君だ!」

「そういうお前はシルフィア!」


 シルフィア……シルフィア・マイシュベルガー。栗色の髪を、桜色の髪留めシュシュでポニテにしたのが特徴的だ。あと、そこそこでかいおっぱいもだな。

 こいつは、俺がこの世界ヴェルセア王国に来てからの幼馴染だ。騎士学校までずっと俺と一緒にいたが、まさかヴァーチアにいたとは思わなかったぜ。


「久しぶり~……って言うにはだいぶ早いけどね」

「数日ぶり、の間違いだろ?」

「アハハ」


 おおらかで強い――俺のいた騎士学校で次席取ったし、しかも優しい。シルフィアに告ってきた男どもは何人いたのか。ま、何でか全部フったけどな。

 それはそうと、だ。


「ところで、お前はヴァーチアに乗ってたんだよな?」

「そうだよ」

「どういう経緯だ?」

「えーっとね……」


 かいつまんで話すシルフィア。

 なんでも、学生時代から目を掛けられていて、卒業と同時に来るように頼まれたんだとか。本人も本人で、このことは名誉あることだーって言って喜んでたけどな。


「なるほどな……。主席の俺があのていたらくだったワケだから、必然お前が目立つワケだ」

「アハハ……。けど、ゼル君はとっても強かったね。機会を見ては何度も挑んだけど、筆記でも実技でも、結局全部負けちゃったし。それだけじゃなくて、小さい頃から200回以上も戦ったのに、やっぱり一度も勝てなかったもんね、私」

「でもお前はつえぇぞ。結局、俺たちでアドシア独占しちまったくれぇだしな」


 卒業時の成績は、俺がダントツのトップ。これは言うまでもねぇ。そんでもって、ちょっくら離れて次席がシルフィアだ。

 3位以下? 大差も大差、月とスッポンだぜ。メンドくさくてひとまとめにしてぇくれぇだ。


「ところで、今をときめくゼル君はどうしてドミニアに?」

「気ままに旅しようと思ったらとっ捕まった」


 しかも勲章と男爵の爵位まで渡されちまったぜ。困ったもんだ。

 間違いなく、叙勲式にはシルフィアも来てただろうしな。


三首竜サーベロイ・ドラッヒェを倒したからだよね? よく知らないアドシアで」

「そうだよ。何でか俺を乗せてくれたみてぇだが……アレがあるからとっ捕まっちまったよ」


 ヴェルリート・グレーセア。間違いなく、俺がアドレーアに目を付けられる理由になっちまったアドシアだ。

 間違いなく強力だが……んなことになるたぁ思わなかったぜ。


 っと、そうだ。アドシアっつったら……。


「お前の“桜玖良さくら”はどうしたよ? さっき姿が見えなかったぞ?」

「えーっとね。今は桜玖良さくら弐式にしきに改装中」

「弐式だぁ?」

「素体をシュタルヴィントから、リヒティアに強化してもらうんだって。あと、専用銃も調整してるとこかな。もうすぐ終わるけど」

「なるほどな……」


 確かに、リヒティアならシュタルヴィントより間違いなくつえぇからな。乗る分にはうってつけだろう。


「ところで、ゼル君のシュタルヴィント改は?」

「ぶっ壊した」

「あ~、なるほどね。だから知らないアドシアに乗ってたんだ」

「そういうこった。シュタルヴィント改の墜落地点に行ったら、なぜかあったんだよ。不思議だろ?」

「そうだね。ゼル君、ときどき何かに導かれてるとしか思えないようなことが起こってるよね」

「何かに……ねぇ」


 言いながら、右手の甲にあるアザを見る。


「そうとしか思えなくなってきたぜ」

「ロマンあっていいと思うけどな?」

「ロマンねぇ。ま、それならいいんじゃねぇか」


 軽く笑ってはみたものの、正直、このアザに関してはさっぱりわかんねぇ。俺の勘でも、どんなものかすら見えねぇワケだからな。


 しっかし、シルフィアと話してっとやっぱ楽しいな。

 なんだかんだ幼馴染だから付き合いなげぇし、ウマも合ってるしな。まるで前世のあいつを思い出すぜ。


 とりあえず、作戦開始まで時間ありそうだし……もうちょっと話してぇな。

 恋愛感情はねぇけど、楽しさだけでおつりがくるレベルだ。


「今ヒマか?」

「うん」

「ならちょっと付き合え。ドミニアにある俺の部屋まで案内すっからよ」

「わーい」


 俺はしばらくの間、シルフィアといろいろ話してたさ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る