我慢に代わる私の選択肢〜人生の岐路、それは今までの当たり前が壊れた時

長女の幼稚園の親子遠足に三人で行った帰り、

調理師の夫が、こんな提案をしてくれました。


「夕食は今日は僕が腕によりをかけてご馳走するよ。

大口の宴会が続くので、明日からまた会社に泊まって仕事をする。

しばらく帰れないから」


何種類ものお料理を振舞ってくれて、久しぶりにとても楽しい家族の晩餐でした。


娘も喜び、ニコニコとご機嫌さんでした。

その食事が、私たちが3人で過ごす最後の時間になったのです。

彼は翌日会社に出勤しそのまま帰ってこなくなりました。


出勤して3日経って、主人は帰らずでしたが、調理師という職業柄、そんなことも過去にあったので、あまり気にもとめず、日常はいつも通り続いていました。


5日が経ち、夫が戻らなかった時、これは異変かもしれないと真剣に思いました。


その頃、テレビではよく北朝鮮の拉致事件のことが報道されていました。

もしかして拉致だったりして?!とも思ったけれど、現実的ではありません。


その頃、仕事関係で、イベントがあり、わたしのメンターでもあるM氏と打ち合わせで頻繁に会うことがありました。

親にも未だ言えずにいましたが、勘の良いM氏に

「何かあったのか?

なんかいつもと違う空気を感じる」

と言われ、図らずも、最近起こってることを話すことになりました。


そして、M氏にはっきりと言われました。

「その最後の家族の団欒から冷静に判断するなら、蒸発は計画的でその日を最後にするから良い思い出として終わらせるための1日だろう。」


直視すれば、そうだと分かることでした。


そして、わたしは確認の作業を始めたのです。


勤めていた会社に電話をしました。

半年前に退社されてます。


携帯に電話をしてみました。

現在使われておりません。


給料の振込口座を確認しました。

二カ月前から振り込まれていません。


半年前に辞めているならその後はどこから?

よく見ると全く違う名前の会社から半年前に100万円振り込まれていて、すぐ引き出され、その後は、知らない個人名で給料と同額が三カ月前まで振り込まれていたのです。


夫は、飲食業を開業して失敗した人でした。

だから、夫の給料は結婚以前の自分の借金の返済にほぼ当てられていたのに、ここからないとするなら、あの借金はどうなったのか?


程なく、色々な所から返済催促の手紙や電話がかかってきました。


催促状を直接ドアを叩いて持ってくるような取立て業者も、ついには来るようになりました。


娘と2人暮らし、本当に不安になり、家にいる時は、出来るだけ静かにしていて、居留守も使いました。

どうしていいか分からず不安に押しつぶされそうになりながらも、ただ娘には何も起きてないフリをしていました。

部屋を暗くして、

「お化け屋敷ごっこしよう。

ピンポンってくるのは、本当のお化けだから、静かにして!シーっ。

いなくなったら、今度は、わたしたちがお化けの番だよ。」

と、そんな不安で怖い状況を遊びにかえて、娘に自分と同じ不安や恐怖を感じさせない工夫を必死にしました。


娘は、パパがなぜ返ってこないのかと、何回も聞きました。

パパはお仕事で長期の出張だからしばらく帰れない、と嘘をつきました。


いっそのこと心が崩壊した方が楽なんではないかとも思ったぐらいだけれど、わたしの心は意外と頑丈に出来ているからそれもありません。

その状況を自分一人がなんとか耐え忍ばなければと思っていました。

必死に仕事をして、借金を返して、生活を戻さなくては、と思っていました。


幸運にも、仕事は好調で前に進んでいて、信頼出来るビジネスパートナーたちと話す機会が毎日あり、ビジネスに向き合う時間がありました。

だから頭がシャキッとしていたから、正気を保てていたと思います。

その不安な状況もを、客観的に見ていられる冷静さも少しはありました。


その残った冷静さで、次にわたしが行き着いた答え、そして出来たことは、誰かに素直に、今の状態や不安な気持ちを話して聞いてもらうことでした。

我慢と忍耐で、体調が崩れ出した時に、

「このまま、わたしが病気で倒れたら、娘はどうなるのか?」と思ったら、全然良くない結果しかイメージ出来なかったからです。


私は叔母に相談しました。

晩婚の叔母は子どもが死産で、そんな最大の悲しみを乗り越えて、子どもはいないけれど、幸せな結婚生活を送っていました。

小さな頃から愛情を私や妹に注いでくれて、とてもバランスの取れた優しく賢い女性で、わたしは誰にも言えないことは、いつも叔母に相談していました。


叔母に電話をすると、ただならぬわたしの様子を察知し、滋賀県からすぐに飛んできてくれました。


現在陥ってる状況を全て話しました。

なぜ両親にすぐ言わないのかと聞かれ、

「反対を押し切っての結婚だったから、こんな結末になったことが情けなくて言えない。

そしてお金のこともあるから、お金に関して厳しい教育をされてきたから、父親にはまさか借金の返済催促が押し寄せてることは言えない。」

という正直な気持ちを答えました。


叔母が、わたしにとても分かるように最善の提案をしてくれました。


「今すぐ、両親に言いなさい。

一人で言えないなら、おばちゃんがついて行ってあげるから。


あなたのお母さんが結婚に反対していたのは当たり前で、あなたも親になったから分かると思うけど、親は子どもの幸せしか願ってない。

だからワザワザ苦労をしそうな相手を結婚相手として子どもが選んだ時、出来ればそれは阻止したい。

だから、おばちゃんは、縁切りの神社があるから一緒に行こうかと誘ったこともあったけど、あなたのお母さんは迷った末、


"でも、あの子が好きになって選んだ人だから、やっぱり引き裂くことは出来ないし、どうなってもあの子ならなんとか切り抜けると信じている。"

って、最終あなたを信じた。

それは強い大きな愛があるからこそと、わたしは思う。

だから今の状況を正直に話しても必ず手を貸してくれる!


お父さんは、ものすごく頭のいい人!

お金に関してなんでも知ってるプロフェッショナルだから、最善の方法を彼は知ってる。

あなたのお父さん以上にお金に関することを知ってる人が他にいるか?

わたしが知る限りあなたのお父さんが、一番熟知している。

だから、今あなたがどうしていいか、分からないことは、全てなんとか出来る方法があるから相談しなさい!」


叔母と話して、わたしの両親の見方は、180度変わりました。


そうだ!わたしには最強の素晴らしいサポーターがいる。


叔母と共にすぐに実家に向かい、2人に全てを話した。


両親に全てを話したとき、本当に胸の中のモヤモヤがスキッとしました。


母は、

「ほら、言わんこっちゃない!だから、反対したのよ、結婚!まあ、仕方ない。

それにしても、なんでもっと早く言わなかったの?

とにかく子どものこともあるから、今最善のことをしましょう。」

と、一緒に何をすべきかを考えてくれました。


父は、「保証人になっていないなら、払う義務がない借金だけれど、その家に催促はやってくるから、出来れば引越しが最善。

けれど、まず、すぐに電話番号と鍵を変えれば、催促の電話や訪問のストレスから逃れられる。

それから、籍を抜くための手続きを進めたほうがいい。」

と、冷静で、確実なアドバイスとそのための準備を進めてくれました。



そして、わたしは、言われたことをその日のうちに行動に移し、

一週間以内に全てのことの準備を整え、

3ヶ月で離婚、

そして子どもの親権も無事に確保しました。



相手がいない場合でも、離婚を進められる方法があることを弁護士から教えてもらい、最短で手続きを終えました。


どんなことでも、すぐに行動に移せば、切り抜けられる方法があります。


体験を通して、初めて知ることがあります。


そして、ものごとには、必ずHOW TOが存在します。


体験してしまえば、大したことはなく、同じ悩みがある人に出会えば「大丈夫だよ」って言ってあげれる自分になれるのです。


頭で悶々と考え、自分の中で悩む時間があるなら、そのことを知ってそうな人、なんとかしてくれそうな人に聞けばいい、ただそれだけ。


そして、手を差し伸べてくれる人の手を取って、出口に向かえばいい。


そんなことをたくさん学べた、貴重な、感謝すべき体験の一つとなりました。


我慢の代わりに出来ること、

それは、一人で抱えていないで、誰かに相談すること。

そんな簡単そうなことが出来ないから、人は苦しみます。

家族や、友だちには、相談出来る人がいなくても、この世の中には、プロフェッショナルな相談者が必ずいます。

そして、そこで必要な知識や、自分にはない考え方、方法を教えてもらったり、手助けを受けて、我慢と忍耐の沼から這い上がってください。


生きていく中で、たとえ先は真っ暗闇だと思ったとしても、必ず道はあります。声を出して、助けを呼んでください。

そしたら、必ず、答えてくれる誰かがいるから、そちらに向かって進んでみてください。

そうすればその声の主がきっと手を引っ張ってくれます。


今まで進んできた道があまりに険しく、疲れ果てたなら、立ち止まって周りを見回して見てください。

きっとその道の隣に、もしくは、少し先に、もっと歩きやすい道があります。

そして、そこを歩いている誰かの手をとって、新しい道に足を一歩踏み出してください。

こんなに、歩きやすくステキな道があったのかと、安心と暖かさに包まれて、走り出したい気持ちになれるかもしれません。


そして、光さす場所に出て笑顔でいられる自分になれたなら、沼にはまって出口の分からない人に手を差し伸べて上げてください。

そんな自分になれたなら、あの時に我慢に代わる選択肢をとれた自分に感謝ができることでしょう。

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