第4話  嗤って喰らう奴ら



視たくないを心がけて過ごす冬が終わる頃。


そのを視てしまった。


逃げることも出来ず。

許されることもない。

自分の居場所もない。


「ウザイ」「キモイ」「ムカツク」という内容のない言葉を浴びせられ、何を直せば良いのかも分からず毎日「ごめんなさい」と謝る日々。


理不尽りふじん難癖なんくせを付けられ目をそむけるような罰ゲームの強要。


日々、無くなる、汚される、壊される彼女の大切なモノたち。どれほど孤独で、悲しく、惨めな想いに沈む夜なのか。


救いのない永遠の責め苦と、どす黒いわらい声。追体験する想いに頭が焼かれた。


昇降口でたたずに、捨てられた靴の場所を指差す。


ごみ箱から靴を拾って渡すと「・・・あり・がとう ございました」苦しそうに言う彼女。


なぶる悪意でこの娘をわらってらう奴らよ、すべて視えているぞ。


憤怒ふんぬに震える心を隠し「助けがいる?」と聞いた。


目を見開いて彼女は驚いた後、小さな声で「・・・もうすこし頑張ってみます」とペコリとお辞儀をする彼女。


助けを拒まれ驚愕きょうがくしながら沸騰する心を強烈に抑え込む。


屈託くったくなく笑って状況説明。


「奴らが靴捨てるの見たからさ、誰のだろって思った」


それには答えず、お辞儀をして帰っていく彼女。見送る俺はバカ丸出しでたたずんだ。あれ程も「助けが欲しいと祈る人間」から助けを求められない事に困惑した。


疑問、そして理解。


ことを彼女から視たのだ。


小さくなる背を呆然と見送り徐々に頭が冷えていった。



何やってんだ俺!こんなじゃダメだろう!少しは冷静になれバカ野郎!自分を叱咤しったした。


HR直前に1年の教室にぶっこんで「この靴捨てた人~?」とかマジでやるとこだった。頭が沸騰してた。


「あれ?捨てた人いないのかな?あなたが隠そうと言ってゴミ箱に捨てたのに!」


「そっちのあなた!いいねいいねって賛成してたよね?」


「こっちのあなたは、バレないかな?とか言ってたよね?」


「靴もだけど、こないだの体操服破ったのも犯罪だよ!警察呼んでもいいよ」


「体操服破ったのはあなただよね?わざわざハサミまで出して切ってたし」


憤怒に我を忘れてこの辺まで暴走していた。


マジ危なかった!


介入どころか学校巻き込んでイジメグループを全員抹殺まっさつする所だった。誰の為にも何の解決にもなっていない。こんなやり方じゃ彼女まで学校にいられなくなる。


俺が


しかも無意識に「俺様TUEEE~!」になってた。ラノベのイキリ主人公だ。スキルで別人になってる。こんな自分を飼ってる?俺が暗黒面ダークサイドに落ちてどうする。天罰食らいそうだ。人畜無害の上級生が下級生の教室に乱入して「ヒャッハ~!」ってマジヤベーわ。


受験勉強でったと思われるわ。


文話しゅうかんしに進学校の闇とか特集されるわ。



---実際なぁ---


求められない事で、あの娘に俺が助けられていた。かばわれていた。あの子のお陰で暴走せずに済んだ。


それはともかく、これなんとかしないとなぁ。


情報が強烈過ぎて共感と言うか引きずり込まれた。俺と彼女が重なって心の中で追体験し、悲しさや悔しさ、みじめさに潰されるところだった。


玩具おもちゃにされる事。人として扱われない事。尊厳を踏みにじられる意味。そしてトラウマという本質が初めて分かった。その恐ろしさを追体験した。そう、初めてその恐ろしさを認識したのだ。


イジメという言葉の意味ではなく、その本質を認識したのだ。


ポーチに付けられたフェルトの人形がわらいながらバラバラにされる。それはまさしく彼女の姿だった。


ヒーローっぽく助けるつもりが、彼女に助けられ落ち込んで布団かぶって寝た。スキル持ちがこれでは終われない。





次回 5話 パイセンのターン

-------------------


この物語を読みに来てくれてありがとうございます。


読者様にお願い致します。


応援ポチ。☆も頂けたら嬉しいです。


ポチをしてくれる事。それはとても励みになるのです。


一期一会に感謝をこめて。よろしくお願い致します。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る