30DAYSな彼女

くぼってぃー

0days かなり急な出会い方ですね

「少し暗くなってきたな。」

時刻は午後6時30分、夏なので時刻と明るさがあまり比例していないが、外はとても暑く、テレビをつけると、熱中症で30人が運ばれたというニュースが報道された。そこまで興味も無かったので、テレビを消して、ジャージを着た。

少年は、部屋から出て少しするとある仏壇に、手を合わせた。

「母さん、父さん、今日も行ってきます。」

遺影は、30代の夫婦だった。

少年は、少しぐちゃぐちゃな冷蔵庫から、栄養ドリンクをとり、一気に飲み干した。そしてソックスを履き、玄関から出て少ししたところにある自転車小屋に行き、赤い自転車に乗って走った。

「少し出るの遅かったかも知れないな、、、急ごう。」

少し早いスピードで走り、数分後コンビニに着いた。

急いで自転車を停めて、店の中に入った。

「すみません、少し遅れました!」

少年は、申し訳なさそうに、奥にいた大柄な男に謝罪する。

「困るよ!ウチは、時間厳守!次遅れたらクビだからな!」

この人は、店長の山内さん。

こうやってネチネチと物を言うが、従業員が困っていたらすぐに助けてくれる優しい人だ。

「急いで接客と、タバコの棚の補充お願いね!」

「はい、分かりました!」

急いでタバコを補充して接客する。


「今日も遅れてきたの?」

隣の男性が聞いてくる。

「はい、、ご迷惑おかけして本当にすみません。」

この人は、先輩の田中さん。

後輩思いだが、自分の信念に従順な人で、仕事は出来る。

「先輩、肉じゃがコロッケが足りていません。」

「分かった、裏で揚げてくるから、ちょっと待ってろ。」

肉じゃがコロッケは、このコンビニでの名物だ。

このコンビニの系列店舗は、各店舗オリジナルホットスナックを作らないといけない。それが少し大変だが、業務はとても楽しい。お客も、優しく、たまにまかないや、賞味期限ギリギリの売れ残りが貰えるので嬉しい。


―4時間後―

「すみません、上がらせて貰います。」

「おう、気いつけて帰れよ、最近通り魔とかがいるらしいからな。」

店長は、見えなくなるまで手を振り見送ってくれた。

「とりあえず、帰ったら風呂入ってまかない食べよ。」

自転車で帰る途中、橋の上に不自然な影が見えた。

暗いが、月明かりのおかげでかろうじて見える。

「あれって、もしかして自殺か!?」

自転車を使い全速力で、橋に向かう。

影の近くで、キューブレーキを止めて、手すりに登ろうとしていた女性を止めた。

「馬鹿野郎、死にてぇのか!こんな所で!」

少女は、やつれて、涙を流した後があった。

「お願い、死なせて。」

少女の目は、虚ろで、真っ直ぐ前を見つめていた。

「生きる気が沸いて来ないの。」

「だからといって、死んでいい理由になるわけねぇだろ!」

急なことで頭が錯乱しており、言葉が思い浮かばなかった。

「死ぬのに理由が要るの?」

「あぁ、居るね!理由も無しに死ぬなんて、馬鹿丸出しの間抜けだ!」

「じゃあ言ってあげるわ!」

悲しそうにこちらを見つめる、その目には怒りが見えた。

「私、アイドルになりたくて上京してきたの、だけどその夢を諦めざる終えなくて、それに、30日で海外に行くの、、、」

「ッ、、だからといって貰った命を無駄にする事はねぇだろ!」

「貴方には、分からないわ!努力して実力も持っていたのに夢を潰される気持ちが!」

彼女の言葉は、重く、一つ一つが心に突き刺さった。

「なら、どうしたら死ぬのを止めてくれる?」

「ここまで聞いて、説得とは、、、本当に優しいのね。」

嫌みにしか聞こえない言葉だった。

「じゃあ、私の彼氏になってよ。」

言われた言葉に脳の理解が追い付こうとしていたが、再び引き離された。

「はっ、?」

「私、アイドルを目指していたから恋もそうだし、恋愛もしたこと無いの。」

「だから彼氏になってくれたら、止めてあげる。」

「貴方じゃ、絶対無理ね、さようなら、最後にこの茶番に付き合ってくれてありがと、じゃあね。」

そう言い、彼女は再び飛び降りようとした。

とっさに腕を掴んだ。

「あんた、いい加減に!」


「俺がお前を幸せにして見せる。」

彼女は、言われた言葉の意味が分からない顔ぶりで顔を見つめた。

「30日間退屈させずに、君と過ごす。」

「必ず、死にたくない、もっと生きたいと言わせて見せる!」

彼女は、黙って手すりから降りた。

「あんた、それ本気?」

「こんな状況で冗談を言えるほど俺のハートは、毛が生えていないよ。」

彼女は、笑い始めた。

「あんたそれ面白いわね!」

「いいわ、今死ぬのは止めてあげる。」

「その代わり、つまらないと感じたら、意地でも死んでやるから!」

冗談のようで真面目な口振りだった。


―こうして、俺と彼女の30日デートが始まった。

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